最初に、痙縮(けいしゅく)という聞き慣れない言葉について、説明しなければなりません。

 痙縮とは、脳やせき髄の病気やその後遺症のために、手足の筋肉が固くこわばったり、力が入りすぎてしまったりする体の状態のことです。

 痙縮のために手足を動かしにくい、逆に勝手に動いてしまうことや、握りこぶしが開きにくい、肘が曲がったまま伸びにくい、足がつま先立ってしまうといったこともあります。

 痙縮が長く続くと、手足の関節が固まるような関節拘縮(こうしゅく)となることもあり、日常生活動作やリハビリテーション、介護の妨げにもなります。また痙縮が強いと、痛みや不眠の原因にもなります。結果本人だけでなく、介護者の生活の質が低下することもあります。

 痙縮の原因となる病気には、脳卒中(脳出血や脳梗塞)のほか、頭部外傷やせき髄損傷などの後遺症、脳性麻痺(まひ)などがあります。

 痙縮の新しい治療としては、バクロフェン髄注療法(ITB療法)があります。新しいとはいえ世界21カ国で行われており、また健康保険が利く治療です。

 どういう治療かというと、バクロフェンという薬をせき髄の周囲へ直接注入することにより、主に足の痙縮を和らげます。また注入する場所を変えることによって、手にも効果があります。

 バクロフェンの効果を保つために、体内に植え込んだ小型の薬剤注入ポンプにより、薬を常に注入することになります。さらに薬の量をリモコンで増やしたり減らしたりすることもできるため、細やかな調整が可能となります。

 ITB療法により日常生活動作やリハビリテーション、介護がしやすくなり、また痛みや不眠が良くなれば、生活の質が高まるかもしれません。

 もちろん、いきなりポンプを体内へ植え込むのではなく、バクロフェンの効果が本当にあるのかどうかをまず試してみることが必要です。

 まとめますと、ITB療法により脳卒中後遺症の痙縮を和らげ、日常生活動作やリハビリテーションが行いやすくなります。また関節の拘縮を予防し、痛みを和らげ、良眠が得られることで、生活の質を向上させ、さらに介護の負担を軽くします。

 ITB療法を行うためには資格が必要ですが、資格を持っている医師や施設の情報は公開されています。かかりつけ医にご相談されるか、公開情報を調べて訪問され、まずはバクロフェンの効果を試してみることをお勧めします。(嘉手川淳 沖縄赤十字病院)