政府は、中国が東シナ海でガス田開発をしているとみられる掘削関連施設12基を新たに確認、計16基を外務省のホームページで公表した。

 12基は2013年6月から今年6月に防衛省が撮影した。16基すべての航空写真と位置関係がわかる地図だ。

 排他的経済水域(EEZ)の境界をめぐっては日中の主張が食い違う。日中からの等距離を中間線とする日本に対し、中国は中間線より東側に延びる大陸棚沿いとしており、確定していない。

 菅義偉官房長官は「一方的な資源開発は極めて遺憾だ」と批判した。日本政府が中国に抗議するのは当然である。境界線で争いがあるにもかかわらず、既成事実を積み重ね、現状変更している中国の強引なやり方はこの地域の秩序と安定を損なうからである。

 中国が南シナ海で、領有権に争いがある岩礁を埋め立て、軍事的利用を視野に入れているのと同じである。

 東シナ海のガス田開発をめぐっては、日中が08年6月に共同開発に合意、10年5月の首脳会談で条約締結交渉を開始することを決めたが、同年9月に発生した尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で交渉は中断したままだ。

 掘削場所が中国側とはいえ、共同開発の信義にもとる。再交渉を難しくする行為と言わざるを得ない。中国外務省報道局長は「日本があおるのは両国の対話や協力にとって明らかにマイナスだ」と非難の応酬をしている。両国には話し合いのテーブルに着くことから始めてほしい。

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 ただ、解せないのは政府がなぜ、このタイミングで中国のガス田開発を公表したのかである。13年中にはすでに3基が確認されているからだ。

 前日には15年版防衛白書を閣議報告。その中でも中国の海洋進出を取り上げ「力を背景とした現状変更の試み」「高圧的とも言える対応を継続、一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢」などと懸念を表明している。

 安全保障関連法案を自民、公明など与党は衆院で採決を強行、安倍内閣の支持率は急落した。共同通信社の世論調査で不支持率が51・6%で、支持率の37・7%を上回った。衆院採決は「よくなかった」が73・3%に上った。「憲法に違反していると思う」も過半数の56・6%を占めた。

 安保法案に対する国民の厳しい視線を中国に振り向け、危機感を醸し出す狙いがあるのではないか、との政府の思惑が見え隠れする。

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 本紙の県内41市町村長へのアンケート(7人無回答)でも、安保法案に反対が20人(48・8%)、賛成は1人にすぎなかった。

 衆院特別委の地方参考人会で与党推薦ながら尖閣を抱える中山義隆石垣市長は「あらゆる外交手段を用いて平和裏に解決されるべき」、古謝景春南城市長は政府に「平和外交の努力をもっとしっかりやってほしい」と求めた。

 政府が中国の危機感だけを強調し、安保法案の必要性を訴えるのは危険だ。東シナ海を「争いの海」にしてはならない。日中両国は外交努力こそ尽くすべきだ。