2017年(平成29年) 11月20日

社説

社説[嘉手納爆音禍]住民の悲鳴が聞こえる

 嘉手納基地に暫定配備された米空軍のステルス戦闘機F35Aの訓練が、7日から始まった。

 嘉手納高校では7日早朝から下校時まで、「まき散らす」と形容するしかないような激しい爆音にさらされ、ほとんどのクラスの授業が断続的な中断を余儀なくされた。

 北谷町砂辺では113・5デシベルの騒音を記録。嘉手納町、沖縄市でも100デシベルを超える騒音が何度も測定された。

 3市町には7日から8日にかけ、「会話ができない」「なんとかしてくれ」などの苦情や訴えが相次いだ。沖縄市池原の夢の園保育園では「子どもたちが飛行機を怖がり、室内で遊ぶ時間に変更した」という。

 F35だけでなく、岩国基地所属のFA18戦闘攻撃機や嘉手納基地所属のF15戦闘機も訓練を繰り返している。北朝鮮情勢の緊迫化で飛行訓練が目に見えて激しくなった。

 内臓を突きあげるようなゴーッという重低音と、鋭く突き刺すような金属音。爆音が断続的に発生することによって生じるイライラと苦痛、睡眠妨害…。

 2月に言い渡された第3次嘉手納爆音訴訟の一審判決は、健康上のリスクが増大している-と現状の違法性を認めるとともに、「住民への違法な被害が漫然と放置されている」と指摘し、政府の不作為を厳しく批判したばかり。

 爆音禍は放置できない現実だ。同盟関係を優先するあまり、もがき苦しむ住民に手をさしのべることができなければ、もはやまともな政府とはいえない。

■    ■

 政府はこれまで事あるごとに「同盟強化」を主張し、米軍を沖縄に引き留めるためにあらゆる手を尽くしてきた。

 だが、同盟関係の「強固さ」だけを強調し、それを支える沖縄がどれほど過重な基地負担にあえいでいるかを語らないのは、あまりにも恣意(しい)的で、一方的である。

 住宅地に近い嘉手納基地の旧駐機場は、1996年の日米特別行動委員会(SACO)で「主要滑走路の反対側に移転する」ことが決まり、政府予算で1月に移転した。

 しかし、在韓米軍基地所属のU2偵察機部隊が飛来して旧飛行場を使うなど、SACO合意が崩れ始めている。

 パラシュート降下訓練は、伊江島補助飛行場に集約することがSACOで合意された。2007年に「例外的な場合」に限って嘉手納での訓練が認められるようになり、「例外的な場合」の拡大解釈によってSACO合意の形骸化が進んでいる。

■    ■

 北朝鮮の核・ミサイル開発は、沖縄にとっても大きな脅威だ。国連決議に基づく制裁と圧力なしに非核化を実現することはできない。だが、対話のない「圧力のための圧力」は暴発を招くリスクが高い。軍事力が行使されれば沖縄は甚大な影響をまぬがれないだろう。

 戦中・戦後の体験を踏まえ、愚直に「対話による平和」を主張し続ける以外に、沖縄が進むべき道はない。嘉手納基地の爆音禍の解消と北朝鮮の「対話による解決」は、譲れない一対の主張である。

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