有権者の期待に応え、「良識の府」としての機能を発揮するのか。それとも、「衆院のカーボン・コピー(引き写し)」とやゆされ、参院不要論に拍車を掛けるのか-。

 集団的自衛権の行使を可能にする法案などを盛り込んだ安全保障関連法案は27日、参院本会議で審議入りした。

 27日の法案趣旨説明に続き、28日から安倍晋三首相が出席し、参院特別委員会で審議が始まる。参院の真価が問われるときだ。 

 国会を二院制とし、衆議院のほかに参議院を置くことになった背景にあるのは、軍部独裁を生んだ戦前の「民主主義の失敗」である。

 今の憲法は「衆議院の優越」を定めている。もし圧倒的な数の与党が衆院に誕生し、強力な機能を持つ衆院を思いのままに運用すれば、「選挙による専制政治」が生まれるのではないか。憲法制定当時の有識者らの危機感が参議院創設につながったのである。

 「数の力の支配する衆院」に対して、「理の支配する参院」が対置され、参院が「良識の府」と期待されるようになったのは、こうした背景があるからだ。安保関連法案の参院審議は「良識の府」としての機能を発揮するまたとない機会である。

 安保関連法案は、国内の大多数の憲法学者や内閣法制局長官OBから違憲だと指摘され、国民の支持も得られていない。そのような法案を衆院の「右へ倣(なら)え」で通すようでは参院の存在価値はない。

    ■    ■

 安保関連法案の中身に関わる論点以前に参院で取り上げてもらいたい問題がある。

 第1に立憲主義について。第2に安倍首相の歴史認識について。第3に安倍首相らが連発する集団的自衛権の「例え話」について、である。

 国の大本のルールである憲法によって国家権力を縛り、人権を保障していくこと-それが立憲主義の趣旨だといわれているが、安倍政権はどうやら立憲主義がお気に召さないようだ。

 安倍首相はこれを「王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方」だとして退けた。以前、憲法改正手続きを厳格に定めた96条の先行改正を主張していたことと合わせて考えると、首相の憲法観が浮かび上がる。

 中谷元・防衛相は安保法制について「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいか」と本末転倒の答弁をし、批判を浴びた。

    ■    ■

 立憲主義に対する理解と、歴史認識をめぐる安倍首相や首相周辺の発言は、海外メディアからも「歴史修正主義」「戦前回帰」などと批判された。このことと安保関連法案は決して無関係ではない。

 歴史認識で対立したまま、軍事力に傾斜した法整備を進めれば、中国が警戒するのは明らかで、東アジアの緊張を今以上に高める恐れがある。

 集団的自衛権の行使を「けんか」や「火事」に例えるのも、現実からかけ離れた比喩で、有権者の理解を妨げるだけである。

 例え話は危うい。