男子生徒が繰り返し発していたSOSを担任が受け止めることができなかった。学校全体で情報を共有することができず、いじめに対する危機意識に欠けていた-。

 岩手県矢(や)巾(はば)町(ちょう)の中2の男子生徒が今月5日、いじめを苦に自殺したとみられる問題で、学校側は調査報告書を父親に手渡し、公表した。

 報告書は、男子生徒が1~2年生にかけていじめを受けていたことが疑われる13件のうち、机に頭を押さえ付ける、全校集会で列に入れない、部活動のバスケットボールの練習中にわざと強いパスを出す-など6件を認定。いじめの積み重ねが自殺の一因となったと結論付けた。 

 父親は「本人がいやだと思ったことは全ていじめではないのか」と学校側の認定のあり方を非難した。

 報告書は「いじめが自殺の一因となった」としているが、「一因」とは他に原因があるような印象を与える。

 校長ら学校の身内による調査報告書である。有識者らでつくる第三者委員会が8月以降に発足するが、徹底検証してもらいたい。

 2011年に大津市で起きた中2男子いじめ自殺をきっかけに、「いじめ防止対策推進法」が成立、施行された。法に基づき、矢巾町教育委員会や学校は「いじめ防止基本方針」を策定した。

 学校の方針には「いじめを発見したときは、特定の教職員が抱え込むことなく」、「校長以下すべての教員の共通理解のもと、役割を分担して問題の解決にあたる」と定めているが、全く機能していなかったというほかない。

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 男子生徒は自殺することを「生活記録ノート」を通してたびたび担任にほのめかし、亡くなる1週間前には「もう市(死)ぬ場所はきまっているんです」と書いた。

 担任は気になる記述があるたびに男子生徒に声掛けなどをしていたようだが、このときの返答は「明日からの研修たのしみましょうね」だった。生徒の身になっているとは思えない感度の鈍さである。

 同校のいじめの認知件数が昨年度から0件の報告が続いているのもおかしい。6月のアンケートでは男子生徒がいじめを訴えたのに学校側は対応しなかった。

 町教委は男子生徒以外を含め昨年度の認知件数を0件から3件に修正する意向だ。

 いじめ0件にこだわる学校の雰囲気がいじめを表に出しにくくしたのではないか。第三者委には学校の現状に踏み込んで解明してもらいたい。

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 悔やまれてならないのは、男子生徒がいじめられていることを約60人の生徒たちが見聞きしていたことだ。全校生徒を対象としたアンケートでわかった。身近な教職員や信頼できる大人、相談機関などに伝えることはできなかったのだろうか。

 いじめは、被害者と加害者のほかに、いじめに同調する「観衆」、見て見ぬふりをする「傍観者」の4層構造があると指摘される。

 いじめは重大な人権侵害である。いじめに気づいたら誰かに伝える勇気を周りの生徒には持ってほしい。