児童相談所が、非常に強力な行政権限である「職権による一時保護」を決定するほど切羽詰まった事案にもかかわらず、幼子の命を救うことができなかった。自治体や警察も虐待を把握していたのに悲劇は繰り返された。痛ましく悔しい事件だ。

 3歳の長女に暴行を加えて死亡させたとして、宮古島市に住む建設作業員の父親(21)が傷害致死の疑いで逮捕された。

 一家は夫婦と子ども4人の6人家族。亡くなった女児を含む上の3人は妻と前夫の子である。2月に神奈川県から沖縄市へ転居し、1カ月半ほど前に宮古島市へ引っ越したばかりだった。子連れの再婚家庭で両親は若く、養育能力や生活環境に問題があったのではないかと推測される。転居を繰り返す中、地域社会からも孤立していたのだろう。

 父親は、妻(23)へのDV(ドメスティックバイオレンス)を繰り返し、ほかのきょうだいも虐待していたことが分かっている。虐待の背景にはさまざまな要因があるが、DVと児童虐待が同時に進み、深刻な事態に発展するケースが少なくない。

 コザ児童相談所が虐待事案として対応したのは4月下旬で、5月初めには父親と子どもを分離する一時保護を、6月半ばには同意を必要としない職権による一時保護を決定している。虐待リスクが高い家庭と判断したからだ。

 にもかかわらず女児が亡くなる今月27日まで一時保護は実施されていない。児童相談所の対応はちぐはぐで疑問が残る。

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 速やかに一時保護に踏み切らなかった理由を、県は「宮古島の祖母宅にいるということでリスクが軽減されると考えた」と釈明する。結果的に危険性を過小評価し、子どもを救う機会を逃してしまった。

 安全確認をしたという宮古島市や宮古島署の対応はどうだったか。児童虐待に対する正しい知識がなければ、本当の意味での安否確認はできない。関係機関で情報が共有されず、危機意識が薄く、支援が不十分だったことが課題として挙げられる。

 2005年、那覇市内で起きた父親による1歳女児虐待死事件を受けて、県は「児童虐待防止に向けての緊急提言」を発表した。今回同様、児童相談所が関与しながら命が奪われたことを猛省してのことだ。

 提言には、子どもの安全確保を最優先し、関係機関の連携強化を図ることなどが盛り込まれた。なぜこの教訓が生かされなかったのか、徹底的に検証してもらいたい。

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 3歳というと、おしゃべりも上手になる、かわいい盛りである。その小さな女の子が、父親の理不尽な暴力にさらされた恐怖を思うといたたまれない。

 沖縄社会は経済的に苦しい家庭が多く、若年出産や離婚率も高く、DV被害が深刻である。児童虐待と無縁ではない問題だ。

 児童虐待は幼い子ほど生命に関わる危険性が高いが、SOSを発することができない。子どもの命を守る一時保護を躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。