報道カメラマン・石川文洋さんが、ベトナム戦争当時に撮影した北ベトナム「救国の英雄」ボー・グエン・ザップ将軍(2013年死去)の写真が切手となり発行される(14日付22面)。米軍の従軍カメラマンとして南ベトナムを拠点に取材していた石川さんはいわば「敵国側」だ。なぜ、石川さんの写真なのか

▼1998年9月、ホーチミン(旧サイゴン)市の戦争証跡博物館に、石川さんの常設写真展示コーナーが開設された。取材した際、戦争を伝える他の展示写真を見た

▼北側の兵士が地対空ミサイルで米軍機を撃ち落とす「決定的瞬間」を捉えた写真。だが、どう見ても遠近感がおかしい。中には継ぎはぎの跡がうかがえ、一目で修正後と分かるものも

▼戦時中、北ベトナムには多くの政府側のカメラマンがいた。戦意高揚を図るための写真は、国家や軍の意向を反映したものになりがちだ。それは、従軍取材を積極的に受け入れた米軍側のメディアの一部にもあった

▼首里生まれの石川さんはベトナムの人たちが家を焼かれ、弱者が犠牲になる姿を、沖縄戦と重ねシャッターを切ったという

▼取材の難しかった北ベトナムが、石川さんの入国を認めたのはそうした住民の視点に立った写真を評価してのことだった。ベトナム戦争終結から40年余り。石川さんの記録写真が色あせることはない。(知念清張)