神奈川県の厚木基地周辺に住む住民が国を相手に起こした第4次騒音訴訟で、東京高裁は一審に続き自衛隊機の早朝・深夜の飛行差し止めを言い渡した。在日米軍再編によって米軍が岩国基地へ移転するまでの「将来分」の損害賠償にも踏み込む判決だ。

 厚木基地の騒音訴訟は1976年に始まり、第1次から3次訴訟までは「過去分」の損害賠償を命じる判決が確定している。通常の民事訴訟ではなく行政処分や公権力行使の適法性を争う行政訴訟として提起された第4次訴訟では、一審の横浜地裁で基地騒音訴訟としては初めて自衛隊機の飛行差し止めが命じられた。

 東京高裁の判決は救済の幅を広げるなど画期的ではあるものの、自衛隊機差し止めと賠償については、米軍移転の時期を踏まえ「2016年末まで」と期限を区切る。

 一方、米軍機の飛行差し止めについて、東京高裁は「国に規制権限がない」とし一審同様、訴えを退けた。

 いわゆる「第三者行為論」である。米軍は日本政府の直接の指揮命令から外れた「第三者」であるから、日本政府には飛行を止める権限はないとするものだ。

 日常的に騒音にさらされている住民からすれば米軍機も自衛隊機も一緒。そもそも自衛隊は一審判決以前から早朝・深夜の飛行訓練を自主規制している。騒音被害の元凶は米軍機である。

 同種の裁判で何度も騒音の違法性が認定される中、その被害を抜本的に改善しようとしない政治の怠慢が浮き彫りになった判決でもある。

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 米軍の活動には規制を加えず、第三者行為論を振りかざす理不尽さを一番感じているのは沖縄県民だ。

 嘉手納爆音訴訟、普天間爆音訴訟をはじめ全国で提起される米軍基地騒音訴訟でも度々、第三者行為論が持ち出され、司法の限界を思い知らされてきた。

 今や第三者行為論は日本が米国に基地の自由使用を認める錦の御旗となっている。だからといって被害を放置していいわけがない。

 米軍機の騒音は単にうるさいというだけではなく、長くその状態に置かれると難聴や眠れないなどの深刻な健康被害を生む。繰り返されるごう音と振動に墜落の不安を抱える人も多い。

 米軍機の運用について司法も政府も規制することができない状態で、果たして主権国家といえるのか。

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 普天間飛行場の移設をめぐり日本政府は、辺野古への移設が唯一の解決策で負担軽減につながると言い続けるが、それは国内法も司法も手出しができない米軍基地が新たに県内の別の場所に造られることを意味する。

 第三者行為論から分かるのは、新基地建設は目に見える負担軽減とはならない、ということだ。

 基地が集中する沖縄では騒音の影響を受けずに住むことができる地域は限られている。違法な水準にある騒音被害を放置したままでは、憲法で保障された基本的人権を守ることはできない。