当時20歳の女性に対する殺人、強姦(ごうかん)致死、死体遺棄の三つの罪に問われた元米海兵隊員で元軍属のシンザト・ケネス・フランクリン被告(33)の裁判員裁判の初公判が、那覇地裁で開かれた。

 ケネス被告は、暴行目的で女性を襲った強姦致死と死体遺棄の罪を認めた。一方で、「女性を殺そうと思っていないし、殺してもいない」と殺人罪を否認した。終始淡々とした調子で表情を変えず、検察側のみならず弁護側の被告人質問にも黙秘を通した。

 被害者の命はどうやって奪われたのか。公判の焦点は殺意の有無と量刑で、市民による裁判員たちが、米軍関係者の事件をどう判断するかが注目される。

 ケネス被告は逮捕翌日から黙秘に転じており、核心に迫る動機など事件の真相はいまだ大半が不明だ。遺体を入れたスーツケースや使用したナイフなどの物証を、日本の捜査権が及ばない米軍基地内に捨てたとされ、米軍関係者の犯罪を立証する困難が、今回も立ちはだかる。

 被告・検察双方が一致するのは、ケネス被告が暴行する相手を探すため入念に準備していた様子だ。だが、米国で退役した後沖縄に戻ったケネス被告は、事件の約1カ月前には妻と新居を構え、子どもを授かったばかりだった。順風満帆に見える直近の生活からは、性暴力の凶行を思い立つ動機は浮かび上がってこない。

 他方、被告がかつて所属していた米軍内では毎年多くの性犯罪が報告されている。ケネス被告には罪の大きさを認識し、真実を述べてもらいたい。

■    ■

 初公判が行われた那覇地裁には朝から、22席の傍聴席の抽選に約500人が並んだ。被害者が遺棄された現場には事件発生から1年半以上がたつ今も献花台が置かれ、手を合わせる人が後を絶たない。

 事件に対する県民の関心の高さの背景には、戦後72年続く米軍関係事件事故の多さがある。本紙が県の資料や文献などを調べたところ、復帰後から2014年までの米軍人・軍属やその家族による刑法犯罪の検挙件数は5862件。うち「殺人」「強姦」などの凶悪事件は571件で、戦後から昨年までの「殺人」「強姦」などの犠牲者は少なくとも620人に上る。

 在日米軍専用施設の70%が集中する沖縄。「これほど集中していなければ事件事故はなかったであろう」との思いが県民から消えることはない。

■    ■

 事件の度に日米政府は再発防止策を喧伝(けんでん)するが、効果は見えない。今回の事件を受けて日本政府は、犯罪防止対策として「地域安全パトロール隊」を創設。青色灯を付けた車両が地域を見回るが、昨年6月~今年10月の通報のうち米軍関係者は事故とけんか、路上寝の3件のみ。対して米軍人・軍属の刑法犯は昨年、過去10年で最少となったものの23件発生した。

 米軍基地がある故に起きる米軍関係者の事件事故。これ以上犠牲を増やさないために必要な対策は何か。日米政府も被告席にいることを忘れてはならない。