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  • 普天間返還協議は米軍に有利に進めたい国防総省が主導権を握った
  • 日本の政権とのパイプを強化、現在の安保法案につながっていった
  • 国防費削減の米側は日本が軍事費や兵力を肩代わりする関係を期待

 米軍普天間飛行場の移設先はなぜ県内でなければならないのか。

米軍基地に掲げられた星条旗と日の丸

 日米両政府が普天間返還協議を始めた約20年前、当時の交渉に携わったロバート・ライス元国務省次官補代理の口述記録から、本土移転を望まない日本政府と、居心地の良い沖縄を手放したくない米軍の思惑が一致し、県内移設を前提に協議を進めていた当時の交渉過程の一片が明らかになった。(本紙7月29日付2面)

 日本政府が米海兵隊を引き止めたがっていたという経緯は元駐日米大使モンデール氏(元米副大統領)の口述記録(本紙2014年9月13日1面)からも明らかとなっているが、今回の文書で注目したいのは、ライス氏が交渉の主導権を握っていたのは米軍だったと証言している点だ。

 当時を知る元米高官らによると、ちょうどそのころ、米側における対日政策に大きな変化があった。

 防衛指針の見直しを重要課題に掲げていた国防総省は、日本側との交渉を米軍に有利に進めようと思案。キャンベル国防次官補代理が奔走し、ペリー国防長官や同省高官と日本の国会議員らが懇親する場を次々と設定した結果、橋本龍太郎首相や大物議員とのパイプが強化され、対日安保政策の主導権は国務省から国防総省へと移っていった。そうした傾向はその後もさらに強まり、現在審議中の安全保障関連法案へとつながっていった。

 国防費削減にあえぐ米政府は日本が軍事費や兵力を肩代わりする新たな関係を望み、安保関連法案の成立を後押しする。米側のそうした期待を反映するかのように、先月中旬、ワシントンを訪れた自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長はバイデン副大統領と会談するなど異例の厚遇を受けている。

 キャンベル氏は、国防総省主導で対日安保政策を担う現在の基盤を作ったいわば立役者だが、ライス氏の証言によると、普天間をめぐる交渉においては、米軍にあらゆる案を拒否されるなど同氏の仕事は「まったく報われないものだった」

 モンデール氏はじめ国務省は在沖米海兵隊の撤退の検討も視野に入れていたが、国防総省は国務省と足並みを揃えられず、沖縄を拠点として維持したいという米軍の主張がそのまま米政府の主張に反映されていった。

 普天間の移設先はなぜ県内でなければならないのかという叫びがいくら高まっても、米軍が交渉の主導権を握り、議論の入り口で沖縄を排除する両政府の姿勢は今も昔も変わらない。

(平安名純代・米国特約記者)