安倍晋三首相は、衆参両院の本会議で所信表明演説を行った。

 衆院選前、政府・自民党は、憲法53条に基づいて野党が臨時国会の召集を要求しても、これに応じなかった。3カ月も放置した末に臨時国会を召集したものの、所信表明演説などの実質審議を一切行わず、冒頭解散に踏み切った。

 特別国会で所信表明演説と代表質問を行うのは、実質審議を求める野党の重ねての要求があったからだ。

 演説は、選挙で公約した課題をおよそ3500字に要約したような内容で、安倍内閣の演説としてはこれまでで最も短かった。

 安倍首相はトランプ大統領との6日の首脳会談で普天間飛行場の辺野古移設が「唯一の解決策」だと再確認したという。所信表明演説では「日米同盟の揺るぎない絆を世界に示した」と大統領来日の成果を誇示してみせた。

 しかし演説では、MV22オスプレイの事故率が今年9月末時点で過去最高になったことには触れなかった。東村高江のオスプレイ炎上事故に伴い、県議会が全会一致で高江周辺のヘリパッドの使用禁止を可決したことにも触れなかった。

 嘉手納基地に暫定配備された最新鋭ステルス戦闘機F35Aの飛行訓練によって、周辺住民がすさまじい爆音に悩まされていることにも、まったく触れていない。

 米軍の訓練によって生活が脅かされている現実は首相の頭にないのだろうか。

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 内閣支持率が急落した6月ごろから、安倍首相や自民党幹部は、「謙虚に」「丁寧に」という言葉を意識して使い始めた。

 衆院選で与党が3分の2を超える議席を獲得した結果、緊張のたがが早くもゆるみはじめているのではないか。

 演説では森友・加計学園問題に対する言及もなかった。

 加計学園問題をめぐって15日に開かれた衆院文部科学委員会は、与党委員の質問に注目が集まった。自民大勝を受け時間配分が見直され、与党の質問時間が増えたからだ。

 自民党から質問に立った義家弘介氏は、メディアや野党を厳しく批判し、手続きの正当性を強調した。8月まで文部科学副大臣として獣医学部新設問題にかかわった当事者である。

 与党が今後、増えた質問時間をこんな調子で活用し、行政の監視ではなく擁護の役割を果たしていった場合、国会のチェック機能が弱体化するのは確実だ。

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 自民党が大勝したからといって、有権者が安倍首相に政策を白紙委任したわけではない。

 安倍首相は北朝鮮問題について、所信表明演説でも「圧力を一層強化する」との姿勢を強調したが、「圧力の強化」と「軍事力の行使」は全く次元が異なる。

 米国の軍事力行使を容認し、米国の攻撃作戦に一体化するようなことがあってはならない。

 国際協調の枠組みを維持しながら、北朝鮮を対話の場に引き込む努力を重ねるよう、あらためて求めたい。