知事就任以来、4カ月も政府首脳に面会できず、沖縄防衛局のボーリング調査がサンゴ礁を傷つけた恐れがあるとして求めていた立ち入り調査も店(たな)ざらしにされていたのに一体何があったのだろうか。

 辺野古新基地建設をめぐり、菅義偉官房長官は記者会見で、移設作業を「10日から9月9日までの1カ月間中断する」と発表した。県が2月下旬に米軍に申請していた立ち入り調査も許可されるという。菅氏は「普天間の危険性除去と辺野古移設に関する考え方や負担軽減を実現したいという政府の取り組みを丁寧に説明したい」と語った。

 菅氏が発表したのは移設作業の中断であって断念ではない。辺野古に基地を建設する考えは何も変わっていない。この時期に発表した意図はどこにあるのだろうか。

 官邸は明らかにしていないが、想像できる。

 衆院で強行採決し、参院で審議中の安保法案をめぐり、安倍内閣の支持率は急落。不支持率が支持率を上回った。

 翁長雄志知事が第三者委員会の検証結果に基づき辺野古埋め立て承認を取り消し、訴訟に発展すれば政権が打撃を受ける。問答無用の強権的な姿勢があからさまになるからだ。そんな事態を避けたい思惑がありそうだ。

 安倍晋三首相は安保法案、原発再稼働、戦後70年談話と厳しい政治日程を抱える。9月には総裁選もある。そんな中で沖縄の声に耳を傾けるという一種のアリバイづくりのようにも見える。政権浮揚のために辺野古を使うのなら沖縄をもてあそぶものである。

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 菅氏の会見を受け、翁長知事も記者会見し、埋め立て承認の取り消しなど、この間は県としても新たな法的・行政手続きを取らないことを明らかにした。「辺野古への建設は不可能という前提で議論をしていきたい」とのスタンスをあらためて鮮明にした。

 菅氏が中断中の集中協議を提案したのは沖縄の声を無視できなくなった側面もある。

 辺野古では海上と陸上で体を張った反対運動が続く。市町村では「島ぐるみ会議」の結成が相次ぐ。それに県・名護市が加わり、三位一体の抗議活動が継続している。

 「辺野古基金」には全国から寄付金が届き、4億円を突破した。世論調査でも全国の6割以上が「工事中止」か「移設断念」を求めるようになるなど変化している。

 翁長知事は、選挙公約に託された有権者の思いを背負いいささかもぶれることなく協議に臨まなければならない。

 概算要求を控える中、集中協議の透明性を高め、県民に疑念を持たれることがないようにしてもらいたい。

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 第三者委の検証結果が指摘するように政府は埋め立て申請で「なぜ辺野古なのか」「なぜ沖縄なのか」説明していない。沖縄の多くの人が感じている根本的な疑問だ。政府は一度も答えたことがない。

 日本の安全保障は、過重な基地を負担する沖縄県民の犠牲の上に成り立っている。政府は集中協議の中でその事実に向き合い、辺野古新基地建設を見直して断念へ舵(かじ)を切るきっかけにすべきだ。