若い米海兵隊員による酒気帯び運転で、那覇市に住む61歳の男性の命が奪われた。

 謝罪のため県庁を訪れた米軍幹部に対し翁長雄志知事が「綱紀粛正、再発防止に努めると言っても、なんら信用できない」と抗議したのは、米軍による事故が何度も繰り返されているからだ。

 日米両政府に対する不信感、根本的な解決策がとられない失望感、尊い命が失われたことへの怒りは、沸点に近づきつつある。   

 事故は19日早朝、那覇市の泊交差点で起こった。在沖米海兵隊牧港補給地区所属の上等兵が酒を飲んで米軍の2トントラックを運転し、対向車線から右折してきた軽トラックに衝突し、運転していた男性を死亡させた。

 海兵隊員からは基準値の約3倍のアルコールが検出され、過失運転致死と酒気帯び運転の疑いで逮捕された。

 この事件にはいくつもの疑問点がある。

 現場は右折レーンのある見通しのいい交差点だ。米軍トラックは赤信号を無視して交差点に進入してきたとの目撃証言もあり、それが事実だとすれば悪質極まりない。

 さらにトラックは軍の公用車だった。米軍は「公務外」としているが、なぜ公務外で公用車を運転していたのか、車両管理はどうなっていたのか。

 公務外としながら、財産権を盾に、トラックを早々に回収したこともふに落ちない。

 海兵隊員は「基地内で酒を飲んだ」とも話しているという。その後、基地外にどのように車を持ちだしたのか、その行動も不可解である。

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 在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官は20日、県庁に翁長知事を訪ね「心から謝罪する」と述べた。

 事件を受けて在日米軍司令部は同日、日本に駐留する全ての兵士に飲酒を禁じる措置をとった。県内の米兵に対しては基地と自宅以外の出入りも禁じている。

 飲酒禁止や行動の制限は、一見厳しい対応のように思えるが、いずれ時間がたてば緩和され、事件・事故が繰り返されることを県民は経験則で知っている。

 昨年4月、元海兵隊員で軍属の男が女性を殺害した事件で、米軍は1カ月の「服喪期間」を設け、飲酒や外出を制限した。しかしその期間中にも飲酒事故は発生した。

 今年に入ってからも2月、4月、5月と酒気帯び運転で逮捕される米兵が相次いでいる。交通安全に関する米軍の教育はどうなっているのか。

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 日本政府は、駐日米大使に「遺憾の意」を伝えた。政府も米軍もこの種の事故に対する反応は素早い。

 それにもかかわらず県民が両政府に強い不信感を抱くのは、ダメージをなるべく小さくしたいという危機管理の発想が目立つからだ。

 根本的な問題は「小さなかごに、あまりにも多くの卵を詰めすぎる」ことにある。

 実効性のある抜本的な対策を示すよう両政府に求めたい。日本本土を含むアジア全域を対象に、海兵隊の部隊配置と訓練の在り方を、再度、全面的に見直すべきだ。