唯一の被爆国・日本が核兵器廃絶を世界に訴えなければならないこの時期に、核をめぐり安倍政権の認識が問われる場面が相次いでいる。

 安倍晋三首相は6日、広島市で開かれた平和記念式典あいさつで「非核三原則」に言及しなかった。式典には1994年から首相が出席しているが、歴代首相で初めてである。

 非核三原則は67年、当時の佐藤栄作首相が衆院予算委員会で核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」と表明した「国是」だ。日本の核兵器不保持・不関与の根拠として歴代内閣も踏襲してきた。

 安倍首相も第1次政権を含め過去3回は非核三原則に言及した。それなのに、なぜ今回盛り込まなかったのか。

 式典終了後に開かれた被爆者代表の要望を聞く会では、安倍首相は一転して「非核三原則を堅持する」と述べた。菅義偉官房長官も同日の記者会見で首相の真意を問われ「非核三原則はある意味当然のことであり、全く揺るぎない」と強調している。

 しかし、戦後70年の節目に過去最多の100カ国が出席する式典で、首相あいさつから非核三原則が削除された事実を、国際社会はどのように受け止めるだろうか。

 被爆者からは、盛り込まなかったことへの疑念や、意図的に触れなかったのであれば許せないという怒りの声が挙がっている。

 式典前日の5日には、安保関連法案を審議する参院特別委員会で中谷元・防衛相が、自衛隊の核兵器輸送の可能性について「法文上は排除していない」と答弁。これにも被爆者団体は「唯一の被爆国が核兵器の使用を容認することにつながる」と批判している。

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 中谷氏はその後、非核三原則や日本が批准する核拡散防止条約(NPT)に触れ「(核兵器の輸送は)全く想定していないし、あり得ない」と否定したが、首相あいさつと合わせて鑑みれば、核兵器に対する政府姿勢が変わるのではないかとの懸念が出てきたとしても仕方ない。

 中谷氏はこれまでにも法案が定義する「弾薬」に、ミサイル、クラスター弾、劣化ウラン弾も含まれるとの認識を示しており、5日の答弁は、核兵器も弾薬に入るとの見解だった。

 法案では他国軍に対する弾薬の提供が可能になる。しかし、「(核兵器は)保有していないので提供はできない」とした。

 ただ、一連の答弁から判明したのは、法案が通れば、理論上、自衛隊は核兵器の輸送も可能になるということだ。

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 松井一実広島市長は平和宣言で「為政者が顔を合わせ、対話を重ねることが核兵器廃絶への第一歩」とし、「武力に依存しない幅広い安全保障の仕組みを創り出していかなければなりません」と被爆国としての立場を繰り返し強調した。

 「(非核三原則は)国是であり、わざわざ(あいさつに)書かなくても分かる」とする首相周辺の態度とは対照的だ。

 当然というなら、なぜ今回、言及しなかったのか。安倍首相に問いたい。