政府は、米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う埋め立て関連工事を10日から9月9日までの1カ月間、すべて中断し、県と集中的にこの問題を協議する。

 県はその間、前知事による埋め立て承認の取り消し手続きをストップする考えだ。

 11日には菅義偉官房長官が来県し、翁長雄志知事と会談。この日を皮切りに期間中、5回程度の協議を予定している。

 安倍晋三首相は「政府の取り組みについてご理解いただけるよう丁寧に説明する」と言う。今回の話し合いによって名護市辺野古の新基地建設計画が見直される可能性はほとんどゼロに近い。

 しかし、実質協議を重ねることによって問題点が鮮明になり、新たな政治状況が生まれる可能性がある。そのようなうねりを県が主体的につくり出すことが重要だ。

 米軍駐留に伴うさまざまな負担をこれからも半永久的に沖縄に押しつけるのは明白な差別政策である。一地域に対する差別的処遇を前提にした安全保障政策はもはや限界にきている。今回の実質協議を持続可能な政策への転換を図る機会にすべきである。

 今回の協議で防衛省は、中国や北朝鮮の脅威を前面に押し出し、海兵隊の沖縄駐留や辺野古移設の必要性を強調するはずだ。重要な論点になるのは間違いない。

 防衛省は辺野古埋め立ての必要性を強調するため、(1)抑止力論(2)地理的優位性論(3)一体的運用論-を展開してきたが、それによって辺野古移設を正当化するのは無理がある。

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 沖縄でなければ抑止力にならないという主張は、現実の変化を考慮しない古い発想であり、多くの専門家が否定している。

 海兵隊は沖縄だけでなく、山口県・岩国基地、長崎県・佐世保基地、グアム、ハワイ、オーストラリアなどに分散配置されており、地理的優位性論も一体的運用論も説得力を失った。中国の弾道ミサイル配備がさらに進めば、沖縄配備の見直し論が拡大するかもしれない。

 前知事の埋め立て承認を検証した県の第三者委員会は、手続きに法的な瑕疵(かし)があったとの報告書をまとめ、知事に提出した。報告書は埋め立ての必要性そのものに疑問を呈している。極めて重要な、本質的指摘である。

 現行計画は、沖縄基地を半永久的に安定使用するための拠点集約化であり、全体として沖縄の負担軽減につながらない。むしろ、自衛隊との一体化を通して沖縄の「要塞(ようさい)化」「不沈空母化」を進める計画だと言うべきだろう。

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 県は政府との協議内容について、その都度公開し、政府が何を主張しているかを県民に広く伝えるべきである。交渉が秘密主義に陥ると、疑心暗鬼が生じる。

 国庫支出金の予算要請についても、振興策と基地のバーターという疑念を抱かれないように注意し、3000億円という額がどういう性格のものか、県のホームページで誤解を与えないよう説明したほうがいい。堂々とまっとうな議論を展開してもらいたい。