鹿児島県薩摩川内市にある九州電力の川内原発1号機が再稼働する。

 福島第1原発事故から4年5カ月。経済界の意向を背景に、国民の6割近い反対を押し切っての極めて強引な決定だ。必要な保安規定の変更を原子力規制委員会が認可したのはわずか6日前のことで、スケジュールありきの感も拭えない。

 九電は11日に原子炉を起動し、14日にも発電を開始する。新規制基準に合格した原発としては初の稼働である。

 この新規制基準は福島の事故の反省を踏まえて、規制委によって策定された。炉心溶融や放射性物質の大量放出といった過酷事故対策を義務付けたほか、地震、津波など自然災害への備えを厳格化した。

 規制が従来より厳しくなったのは確かだが、安倍政権が錦の御旗とする「世界最高水準の規制基準」は信用できるのか。

 例えば、川内原発周辺には大規模噴火の可能性が指摘される火山がある。

 九電は巨大噴火があっても火砕流などの影響を受ける可能性は十分小さいと評価し、規制委も妥当と追認。噴火の前兆を捉えるための監視を条件とする。

 しかしこの決定には、噴火予知の限界への理解が欠けている。日本火山学会や火山研究者の指摘するところである。

 過去に巨大噴火を起こした火山が集中する地域であることを考えれば、立地条件を根本から問うべきだ。

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 再稼働で住民が最も不安に思っているのは、福島第1原発事故のような過酷事故が起きた際、どのように被ばくを防ぎ、どのように逃げるかといった避難計画だ。

 国は原発から半径30キロ圏内の自治体に避難計画の策定を義務付けている。川内原発の30キロ圏には鹿児島県の9市町が含まれ、約21万人が暮らす。圏外にある市町に避難する計画だが、受け入れ体制の整備は具体的には進んでいない。

 本来なら再稼働の前に実施すべき住民の避難訓練も先送りされたまま。病院や老人介護施設など災害弱者の避難計画策定も遅れている。

 そもそも再稼働にお墨付きを与えた規制委は、避難計画を審査の対象にしておらず、実際に事故が起きた場合の責任の所在が不明確となっている。住民の命を守る最後の砦(とりで)となる避難計画の実効性にはたくさんの疑問符が付く。

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 政府や電力会社が再稼働を急ぐのには、電力コストを重視した景気対策、経営改善といった側面がある。

 しかし忘れてはならないのは、「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の最終処分が宙に浮いたままという現実だ。原発が稼働すれば廃棄物は生まれ続ける。

 福島県では今なお約11万人が避難生活を余儀なくされている。「いったん事故が起きると、住民の命、なりわい、歴史が奪われる」という悲痛な叫びが胸を打つ。

 事故の収束が見えないままの再稼働を認めるわけにはいかない。