夏休みの楽しい思い出になるはずだった観光旅行が、暗転した。残念でならない。

 宮古島市伊良部の渡口の浜で10日午後、シュノーケリングを楽しんでいた家族4人が沖合に流され、長男(12)、父親(47)、祖父(72)の3人が死亡した。

 家族は3世代6人で兵庫県から観光に来ており、この日宮古島市を訪れたばかりだった。

 長女(8)が沖合に流されたため、助けようとして沖に向かって泳いだ父親と祖父も流された。

 長女は近くにいた人が浮輪を投げて救助。父親と祖父は住民らが引き上げたが、死亡が確認された。長男も沖合で発見された。

 現場は台風13号の影響が残り、波の高さが約2メートルで強いうねりを伴っていた。地元の人なら「とても海に入ることはできない」気象条件だ、という。

 子どもたちが「潜れないから」と、着用していた命綱のライフジャケットを脱いだことも、重大事故につながったとみられる。4人とも発見時にはライフジャケットを着用していなかったという。

 渡口の浜は、砂が細かく、遠浅で日ごろは波が穏やかな海である。伊良部島のシュノーケリングの人気スポットとして観光ガイドブックにも紹介されている。伊良部大橋がことし1月に開通して以来、宮古島から日帰りの観光客が増えている。

 観光に来て目の前に広がる海を満喫したい気持ちはよくわかる。だが、気象条件を見て、シュノーケリングをやめる判断ができなかったものか、悔やまれてならない。

    ■    ■

 第11管区海上保安本部は本格的なマリンレジャーのシーズンを迎え、事故が急増しているとして同日、注意を呼び掛けたばかりだった。

 ことしは特にシュノーケリング中の死亡事故が多く発生しているのが特徴だ。

 11管のまとめによると、今年に入ってからのシュノーケリング中の死亡者は10日現在、14人。このうち観光客は9人と6割以上を占める。

 昨年の同じ時期と比較すると、死亡者が5人、観光客の死亡者も2人増えている。

 11管のホームページにはシュノーケリングの安全対策として、ライフジャケットなどを着用する、バディ(2人一組)システムを取る、飲酒・体調不良では入らない、穏やかな場所を選ぶ-など5箇条を挙げている。

 地元の海をよく知らない観光客の注意をどう喚起するか。観光立県、沖縄の課題と受け止めたい。

 個人のレジャーにどこまで介入するかの議論はあるだろうが、事故防止に向けてもっと取るべき対策はないのか、関係機関は事故を教訓に点検してもらいたい。

    ■    ■

 夏休みのこの時期、透明度の高い沖縄の海を満喫し、間近で泳ぐ生き物やサンゴ礁を観察する。こんな貴重な体験は何物にも替え難い。

 だが、美しい海も常に危険と隣り合わせである。「この程度なら大丈夫」との考えを捨て、大人も、子どもも、細心の注意を心掛けたい。