敗色濃厚だった4-5の九回、興南主将の比嘉龍寿は打席に向かう仲間たちに「最後の打席かもしれない。思い切り振っていこう」と声を掛けた。これに背中を押された石川涼が1死二塁で同点打を放ち、さらに2死一、二塁、代打の城間楽人がこの夏初めての打席に入った。

石見智翠館-興南 9回裏興南2死一、二塁、代打・城間楽人が左前にサヨナラ打を放つ=甲子園球場(朝日新聞社提供)

 2年生までは投手。肩痛で打者に転向したものの、守備が粗く定位置は遠かった。だが、1日に大阪入りしてからの練習で、快音を連発していたという。

 我喜屋優監督に「気持ちで打ってこい」と送り出された城間は緊張の中、2球目のストレートをフルスイング。左前に運んで逆転サヨナラ勝ちを決めた。晴れの舞台の勝負どころで、控えの男が大仕事をやってのけた。

 好投していたエース比屋根雅也が八回に乱れて4失点し、逆転を許した。我喜屋監督は「甲子園の神様は簡単に勝たせてくれない」と思ったというが、勝負を捨てた選手はいなかった。城間は「みんながつないでくれたから打てた。自分が決めるつもりでいった」と満面の笑みを浮かべた。

 エース島袋洋奨と強力打線で春夏連覇した5年前のチームのような派手さはない。それでも、城間は「5年前より打撃力は落ちるけど、チームワークは強いと思う」と胸を張る。新生興南が結束力で、聖地での初勝利をつかんだ。(粟国祥輔)