毎週金曜日、名護市で開かれる「やんばる朝市」は、農家がホテルやレストランの料理人に直接、作物を販売している。顔を合わせ、情報交換することで、捨てていた作物が商品に変わり、料理の幅も広がった。月の売り上げは6年間で倍増して約50万円に。地産地消の効果を、双方が実感している。(北部報道部・阿部岳)

旬の野菜を品定めする料理人たち=7日、名護市・山田集落センター

 7日午前8時すぎ、羽地地域の山田集落センター。農家の花城スエ子さん(53)がローゼルの葉を並べていた。「普段は商品にならないけど、かわいいから料理の敷物にどうかと思って」。規格ではなく、工夫が商品を生んでいる。

 取引開始の9時には、農家が値付けした作物が床を埋めた。不ぞろいでも曲がっていても、立派な商品だ。料理人が札を置いて買い付けていく。希望が重なったら分け合う。30分でほぼ完売した。

 ■1千万円の衝撃

 朝市を買い手として支えるのが料理人約100人でつくる「やんばる料理研究会」。会長の川上明登さん(54)が、福岡県の農家による「上畑(じょうばた)の郷(さと)かあちゃん会」を視察したことがきっかけになった。ホテルやレストランを手掛ける企業1社と毎日取引があり、年間1千万円以上を売り上げる農家も。川上さんは「衝撃的だった」と振り返る。

 ちょうど羽地地域の農家は国営かんがい排水事業を機に、所得向上策を練っていた。農家の女性で結成した「やんばる朝市かあちゃんの会」も福岡を視察。1社だけではなく、研究会のメンバー複数と取引する形で2009年3月に朝市が始まった。

 ■取扱品目は5倍

 料理人は畑にも足を運んだ。川上さんは「農家が思いを込めて作っているのが分かる。メニューありきではなく、旬の食材を生かせるメニューを考えている」という。観光客が増える中、不足しがちな地元食材を確保するメリットも大きい。

 研究会副会長の湯川益弘さん(55)はゴーヤーのつるを出してもらって、天ぷらに使う。「捨てられるはずだった野菜が喜び、お客さんが驚き、私たちはお金を頂く。これが地産地消です」

 6年間で取扱品目は70種から370種と5倍に増え、年間120万円を売り上げる農家も出てきた。中間の手数料がない分、収益は増える。代金がJAなどより早い翌週に入るのも魅力だ。

 常時出品する農家は7人から20人近くに広がったが、まだまだ足りないという。かあちゃんの会代表の金城美代子さん(61)は「内地の野菜を使った料理では、北部のおもてなしとはいえない。もっと農家を増やし、地域全体がもうかるようにしたい」と話した。