名護市辺野古の大浦湾にブイ(浮標)が設置され、14日で丸1年がたった。新基地建設をめぐる相克を重ねてきた海は、急転直下に決まった工事作業の一時中断で閑散としている。建設を進める立場で現場に通っていた人々の思いは-。あらがう市民と対峙(たいじ)する「向こう側」の彼らを追った。

新基地建設へ向けた工事が中断された名護市辺野古の大浦湾。抗議の市民らを監視する警戒船が静かに漂っていた=14日午後、キャンプ・シュワブ沿岸

 ■警戒船の漁師 「困らない」本業に精

 「本職にいったん戻るだけ」。13日の昼下がり。辺野古漁港で船の整備をしていた漁師は淡々と話す。

 建設に抗議する市民らを海上監視する地元漁師の警戒船は、作業中断で30隻から10隻に縮小された。政府から漁師に渡されるのは日当約5万円。「破格にもうかる」(辺野古区民)という仕事の口が減った。

 汀間漁港にいた別の漁師は「今はマグロが釣れているから、警戒船の仕事は要らない」と明かす。前日のマグロ水揚げ高は日当の倍以上の十数万円に上った。

 くしくも作業中断の10日以降、マグロの大漁が続いている。警戒船の仕事がなくなって生活に困ることはあるのか-。興味本位で聞いてみると即答だった。「ためこんでいるし、困りゃしないよ」

 辺野古区にはこの1年で、新築の住宅が目立ち始めた。区在住の70代男性は「あっちもこっちも、政府から名護漁協の組合員に支払われた1人2千万~3千万円の漁業補償で建てたものだ」と声を潜める。

 12日は米軍ヘリが伊計島沖の海上に墜落したばかり。「本当は基地が怖くて嫌でも、賛成のふりしてお金をもらうのを待つ(組合員以外の)人も多い。(個別補償を)もらえる見通しなんてないのに。この区はずっとキツネにつままれている」と嘆息した。

 ■海保「夏休み」県警・民間警備員「休む? 無理」

 日々、海で抗議市民と向かい合ってきた第11管区海上保安本部内には休戦モードが漂う。海保関係者は「皆で一息入れましょうというところですかね。夏休みを取るのも今のうち」と胸をなで下ろす。 

 他方、そうもいかないのは陸の警備。作業中断されても米軍キャンプ・シュワブのゲート前で抗議行動が続く。県警幹部は「あくまでも通常と一緒」と気を引き締める。「中断で休めるといいですね」との記者の問い掛けに、現場を管轄に持つ名護署の幹部は「無理だと思うよ」と即答。「反対派は前から新ゲートで工事と関係のない車も止めてるし…」とつぶやく。

 民間警備会社のアルソックは中断後も24時間警備の体制を崩さない。関係者は「ずっと警備しないといけないから何も変わらずだよ」と日焼けした額の汗をぬぐった。