中谷元・防衛相は16日、名護市の稲嶺進市長、翁長雄志知事と別個に会談し、米軍普天間飛行場返還に伴う辺野古への新基地建設計画について意見を交わした。

 いずれの会談も主張の隔たりが大きく溝は埋まらなかった。政府が「辺野古移設への協力を求める」という姿勢に終始すれば、いくら協議を重ねても、議論は空回りするだけだろう。

 普天間飛行場は、日本の主権の及ばない軍事占領下に、住民の意思を問うことなく米軍が一方的に建設したものである。日本本土には移設を引き受ける自治体がないから「沖縄が引き受けるしかない」という本土側の主張は、沖縄側から見れば理不尽な押し付け以外の何ものでもない。

 会談で中谷防衛相は「海兵隊の沖縄への駐留は安全保障上の観点から不可欠である」「海兵隊は一体性、機動性、即応性が重要」だと語ったという。だが、この説明には説得力がない。

 海兵隊は、岩国基地に固定翼機や給油機の部隊、佐世保基地に歩兵・砲兵を運ぶ揚陸輸送艦、ハワイやグアム、オーストラリアにも歩兵などの部隊を分散配置しており、一体性はすでに崩れている。

 翁長知事は会談後、記者団から感想を求められ、「(政府は)沖縄を領土としか見ていないのではないか。140万県民の安全・安心や、戦後70年に及ぶ沖縄県民の貢献をどう考えているか」と疑問を呈した。多くの県民が日常的に感じている根強い疑問であるが、中谷防衛相はこれに答えていない。

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 地上部隊と航空部隊と揚陸艦が近接していることは、海兵隊にとって理想的ではあるが、現状は中国のミサイル開発などによって分散配備が進んでいるのが現状だ。

 「辺野古が唯一の選択肢」という言葉は、これでもかこれでもかと繰り返し使われているが、両政府は県や県民に対してその根拠を詳しく説明したことがない。

 民主国家で大事なことは基地建設や部隊配備について、軍側の必要性だけで判断してはならないということである。そこに住んでいる人々は直接影響を受ける当事者であり、当事者や当該自治体の意向を無視した新基地建設はあってはならないことだ。

 11日夕、菅義偉官房長官と会談した翁長知事は、基地問題をめぐって「県民の気持ちには魂の飢餓感がある」と語った。この印象的な言葉を政府はどう受け止めただろうか。これを受け流す姿勢から建設的な議論は生まれない。

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 菅長官や中谷防衛相が入れ代わり立ち代わり沖縄を訪問し、集中協議を重ねたということは、協議の結果に政府として責任を負わなければならなくなったことを意味する。日本政府の問題解決能力が試されているのである。

 不毛な協議に終わらせないため政府に対しては、昨年の名護市長選、県知事選、衆院選で示された「辺野古移設反対」の圧倒的な民意を謙虚に受け止め、ないがしろにしないこと、を強く求めたい。それが政府と県の話し合いの大前提である。