所信表明演説といえば、一国の首相が国政の方針を国民に説明する言わずと知れた大事なスピーチ。それこそ、霞が関の官僚組織を挙げて内容を精緻に練り上げていると思っていたが、必ずしもそうではないようだ

▼安倍晋三首相は17日の演説で、待機児童解消を目指す決意は揺るがないとし「2020年度までに32万人分の受け皿整備を前倒しで進める」と語った。ところが、肝心の「32万人」という目標設定の根拠に疑義が出ている

▼認定NPO法人フローレンス代表理事で、内閣府子ども・子育て会議委員の駒崎弘樹さんは「既に目標は陳腐化している」と言う。どういうことか

▼32万人は、女性就業率や保育利用の申込率などを踏まえ、厚生労働省が昨年9月に試算した数字。しかし今年9月に内閣府が示した資料では、20年度まで待たずとも、18年度には32万人分の受け皿づくりは達成される、となっていた

▼つまり、厚労省が最新の数値を反映させず、政治家もそれに気付かないまま、古いデータを基に首相が演説してしまった、というのだ。駒崎さんは「うそのような本当の話」と評す

▼民間シンクタンクは、必要な受け皿を88万人と試算している。保育ニーズの実態を見ずして政策は立てられない。「仕事人内閣」が“お役所仕事”に陥ってしまえば、笑うに笑えない。(西江昭吾)