今年は戦後を代表する琉球舞踊家・真境名佳子さんの13回忌の年だった。最後にお話を伺ったのは、亡くなる前年の冬、リハビリをしている病院でだった

▼「とー、コーラー飲みなさい」。待合室で買ってもらったコーラを飲みながら、ご自身が体験してきた厳しい稽古や舞踊家の心構えなどを聴かせてもらった。中でも印象に残ったのは「どんなに教えても、最後は本人が究めるしかない」という言葉だ

▼古典の型を守る妥協を許さない姿勢で尊敬を集めたが、同時に斬新な創作舞踊の作者でもあった。創作は「自由につくったほうがいい」と話す一方で「基礎になるべきウチナーの心が見えない」と人目を引くだけの作品への辛口の意見も忘れなかった

▼様式を守りながら、新しい息吹を取り込まないと伝統は枯れるとの確信があった。芸の伝承の難しさを誰よりも実感していたに違いない。「伝統芸能は誰のものでもない。先人から預かったものを、後の人に伝えるのが私の仕事」

▼事は芸能の分野だけにとどまらない。近年、保存と継承に注目が集まる「しまくとぅば」や、東京五輪で正式種目となった空手も同じではないだろうか

▼伝統を後世にしっかり手渡すためには新しい要素も必要だが、その配分を誤っては元も子もない。真境名さんの思いは、沖縄の伝統文化共通の課題だ。(玉城淳)