安全保障関連法案の成立を先取りした資料だ。

 共産党の小池晃氏が11日参院特別委員会で明らかにした統合幕僚監部の内部資料「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)及(およ)び平和安全法制関連法案について」である。中谷元・防衛相は19日の審議で終始説明に追われた。

 49ページにわたる資料で分かった法案の本質は大きく三つ。その一つは、法案の審議入り前に成立を前提とした任務が提示されていることにある。

 審議を横に、資料は8月「法案成立」、来年2月「法施行」を想定。南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)について、来年3月には「駆け付け警護」など法案に基づく新たな任務を加えたスケジュールを明記している。

 駆け付け警護は、PKOで他国部隊などが武装集団に襲われた際、自衛隊が武器を使用して助ける任務だ。現行法では海外での武力行使につながる恐れがあることから認めておらず、法案審議の焦点である「自衛隊員のリスク増」や「集団的自衛権の行使」に直結する。

 中谷氏は、審議前に隊員への法案周知を指示したとし「(資料は)私の指示の範囲内のものだ。シビリアンコントロール(文民統制)上の問題があるとは考えていない」とするが、具体的な任務を提示した資料は、周知という目的を逸脱している。

 資料を基に5月26日には陸海空の指揮官ら約350人が参加するテレビ会議が開かれたのに、8月まで内容を知らなかったとする中谷氏が、自衛隊の統括者として文民統制を守り得たか疑わしい。

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 二つ目は、法案による自衛隊の変質である。資料41ページには、日米がことし4月合意した新ガイドラインと法案成立に基づいて「同盟調整メカニズム(ACM)」の設置を明記。それに伴う検討事項として「軍軍間の調整所への要員の派遣等を含む日米間調整の検討」を挙げた。

 自衛隊は、いつ「軍」になったのだろうか。国会では度々、自衛隊が「軍」ではないと確認されてきた。

 安倍晋三首相は3月の衆院予算委員会で、その自衛隊を「わが軍」と呼んだ。野党の追及を受け「(今後は)使わない」(首相)とした。その後作成された資料に軍と記された事実は、自衛隊を「軍」であると認めないことで専守防衛に徹してきた歯止めが、法案が成立すれば取り除かれることを表している。

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 三つ目、法案の性質を最も端的に示したのが資料冒頭で詳細に記述された日米ガイドラインだ。県選出の国会議員・赤嶺政賢氏(共産党)は「法案はガイドラインを実行するための手段」とみる。

 安倍首相が今春、国会で審議を尽くすより先に、米議会で法案成立を約束したのもうなずけよう。

 法案によって日米の軍事一体化は進み、自衛隊は米軍の「下請け」機関となる。減少傾向とはいえ国防費年60兆円、世界の軍事費の3分の1を占める巨大な軍の前に、文民統制が揺らいでいる。