性犯罪の罰則のあり方を議論してきた有識者らでつくる法務省の検討会が報告書を取りまとめた。

 強姦(ごうかん)罪の法定刑の下限を引き上げることや、強姦罪と強制わいせつ罪を「非親告罪」に改めることなどを多数意見として盛り込んだ。

 上川陽子法相は今秋にも、法制審議会に刑法などの改正を諮問する方針だ。

 検討会の論点は多岐にわたるが、厳罰化と非親告罪の二つが焦点だ。

 強姦罪の法定刑は現行で「3年以上の懲役」である。強盗罪の「5年以上の懲役」よりも軽い。委員からは「人間の尊厳そのものに対する侵害である。3年では低すぎる」「被害が長期間続き、場合によってはほとんど一生続くことを考えると、最低でも5年に引き上げるべきだ」などと厳罰化を求める意見が多数を占めた。5年以上の懲役は殺人罪の法定刑の下限である。

 裁判員裁判で性犯罪に対する判決が厳罰化の流れにあることを踏まえると、検討会の多数意見は市民感覚に沿ったものといえる。

 強姦罪や強制わいせつ罪は、現行では親告罪である。容疑者を起訴して法廷で裁くには、被害者の告訴が必要である。被害者の意思を尊重し、名誉やプライバシーを保護するためだといわれる。

 だが、委員からは「立件、訴追の手続きが被害者に負わされ、心理的負担が増している」「犯罪として捜査され、証拠があれば起訴されるべきだ」など告訴がなくても加害者の罪を問うことができるよう求める意見が多数だった。

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 内閣府が2014年度に20歳以上の男女5千人に無作為抽出でアンケートを実施。回答のあった女性1811人のうち異性から無理やり性交された性暴力被害者は6・5%。このうち約7割が誰にも相談しなかったと回答した。被害者が沈黙せざるを得ず、性犯罪が表面化するのは一部にすぎないことがうかがえる。

 告訴しようとしても加害者の弁護人から示談などを迫られたり、警察での手続きでさらに傷付いたりすることを恐れ、踏み切れない人が多いことは容易に想像できる。

 警察、検察、裁判の刑事手続きの過程で、捜査関係者や裁判官らが被害者の立場に身を置き、人権やプライバシーに配慮しなければならない。それは現行の親告罪か、非親告罪にかかわらずである。

 検討会のヒアリングで、被害者が非親告罪の条件として「プライバシーや生活が守られる仕組み、私の安全が完全に確保される状態ができている」ことを挙げた。被害者の心理的負担を軽くすることが大切だ。

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 性犯罪は「魂の殺人」といわれ、被害者の人格や尊厳を侵害する卑劣な犯行だ。

 だが、厳罰化と非親告罪を押し出すだけでは、性犯罪を根絶するのは難しいだろう。

 被害者に寄り添った支援策を充実させることはいうまでもない。その上で、性犯罪者の再犯を防止するため医療的な治療プログラムの実施まで施策を広げていく。行政だけでなく医療機関と連携した取り組みが必要だ。