「才能は一瞬のひらめきだと思っていた。しかし今は10年とか20年、30年を同じ姿勢で同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている」。将棋の羽生善治棋聖(47)の言葉だ

▼これが史上初の偉業を成し遂げたゆえんか。羽生さんが第30期竜王戦で勝利し、「永世7冠」を達成した。素人には想像もつかないが、その快挙は意味を知ることで分かる

▼各タイトルで「連続5期」など決められた回数を獲得すると「永世称号」の資格が与えられる。「永世7冠」は、八つあるタイトルのうち、ことし新設された「叡王」を除く七つ全てで「永世称号」を取ること

▼つまり、挑戦し続け、覇者であり続ける偉業だ。谷川浩司九段は「永世称号は一つだけでも大変なのに七つとは信じられない」と飽くなき好奇心、探求心を称賛。加藤一二三・九段も「類いまれなる才能をたゆまぬ努力で開花させた」と賛辞を贈る

▼「緊張はあったが、楽しんで自分の将棋ができた」と振り返る羽生さんの平常心に感服する。挑戦者になれたことを「幸運」と言い、積極的に臨んで手にした結果は、まさに積み重ねた「才能」だろう

▼若手棋士の台頭を歓迎し、「経験だけに頼らず最新の将棋も取り入れることが必要」と新たな流れにも挑む。そんな姿勢は多くの若者や同世代に、挑戦の先にある未来を照らしてくれる。(赤嶺由紀子)