「そんなに人口が増えたら島が転覆するんじゃないか」

 在沖米海兵隊のグアム移転計画をめぐり、ハンク・ジョンソン米下院議員は2010年3月、下院軍事委員会が開いた公聴会で米幹部にそう問いを向けた。

 小さな島グアムの18万の人口が、工事最盛期には約45%増となる米国防総省の計画のずさんさを批判したものだった。

 「島が転覆」発言はネットでたちまち話題となり、嘲笑的に捉えられた一方、米主要メディアは計画の概要を伝えた上で「的を射た発言」(米CBSテレビ)などと報道。グアムでは「私たちの気持ちをよく表している」と喜ぶ市民らも多かったようだ。

 当時、計画の修正を求めるグアム州政府は米連邦政府と協議を重ねていたが、交渉は難航。一時は「転覆」するかのようにみえた状況を変化させたのは、米政府を相手取り裁判を起こした環境団体や市民らの行動だった。

 あれから時は流れ、グアムへの移転数は大幅に削減されたが、辺野古移設計画はそのまま残った。

 6月に訪米した名護市の稲嶺進市長がジョンソン議員と会談する前に、前述したエピソードを打ち明けると、稲嶺市長は会談で同議員に対し、「さらなる負担を押し付けられようとしている私たちの島はまさに転覆しかねない」と訴えた。

 県外移設という公約を破った前県政を「転覆」させた翁長雄志知事が応じた政府との集中協議の行方を不安視する市民は少なくない。

 第三者委員会の報告を受けた迅速な行動を公言していた翁長知事に対し、17日には新基地建設計画に反対する49の市民団体や二見以北の会などが埋め立て承認の取り消しを求める要請書を提出した。

 そうした沖縄の人々の背中を後押しするかのように22日、海外の著名人や文化人、運動家ら74人が声明を発表した。

 末尾は「沖縄の人々は、知事が無条件で妥協や取引も全く伴わない埋め立て承認取り消しを行うことを求め、期待していることを明白にしている。われわれは沖縄の人々のこの要望を支持する。世界は見ている」と結ばれている。

 翁長知事はどこへ向かって舵(かじ)を切ろうとしているのだろう。まさに世界は見ているのである。(平安名純代・米国特約記者)