イラブチャー、ミーバイなど県産魚はしまくとぅばでの名称が広く認知されていることが多い。漁師から仲卸、小売り、消費者まで一貫した呼び名が残り、観光客やしまくとぅばを知らない世代にもその名が浸透している。一方、「グルクン」などなじみの深い魚にも複数種類いることなどは知られていない。県産魚の流通減少によりしまくとぅばの消失が危惧される中、認知度向上への取り組みに注目が集まっている。(政経部・久高愛)

【ビタロー】高級魚で水深が深い場所で釣れることからしまくとぅばで「フカヤービタロー」とも呼ばれる(マルカ水産提供)

【ヨスジビタロー】浅瀬で釣れ、ビタローと見た目が似ていることから「イノービタロー」と呼ばれることもある(マルカ水産提供)

その日取れた鮮魚をなじみの客に勧めるマルカ水産の上原恒安代表(右)=5日、那覇市・泊いゆまち

【ビタロー】高級魚で水深が深い場所で釣れることからしまくとぅばで「フカヤービタロー」とも呼ばれる(マルカ水産提供)
【ヨスジビタロー】浅瀬で釣れ、ビタローと見た目が似ていることから「イノービタロー」と呼ばれることもある(マルカ水産提供) その日取れた鮮魚をなじみの客に勧めるマルカ水産の上原恒安代表(右)=5日、那覇市・泊いゆまち

同名でも複数種 漁師は細分

 県内小売り大手のサンエー鮮魚事業部の担当者によると、店頭に並ぶ県産魚の割合は全体の約2割にとどまるものの、年間を通じて流通する魚種は約30種類に上る。その表示はしまくとぅばが主流。担当者は「なじみの深い魚は和名で表示しても、かえって消費者には伝わりにくい。顧客からの問い合わせもしまくとぅば名がほとんど」と話す。

 また、県内の飲食店でも「グルクンの唐揚げ」や「ビタローのバター焼き」など、提供される魚料理はしまくとぅばでの表記が多い。観光客の増加などもあり、県内の幅広い世代や県外の人にも魚のしまくとぅば名が普及してきた。

 漁師として漁業に携わり、現在は大国海産で仲買を担当する比嘉良さん(42)は「魚のしまくとぅば名は漁師からそのまま仲卸、小売り、消費者まで伝わり定着してきたのでは」と推測。

 特定の魚は認知度が高い一方、ひとつの名前にも実は複数種類いることはあまり知られていない。県内で流通する「グルクン」には、カブ(まき餌)をよく食べるという意味の「カブックヮヤー」、比較的水深が浅いところで取れる「ウクー」、死後に尾びれ(ジュー)が赤くなる「アカジュー」など魚種が異なる複数の「グルクン」がいる。「ビタロー」にも、ほかに見た目が似ている「ヨスジビタロー」などが含まれる場合がある。「ミーバイ」や「イラブチャー」も複数種類が市場に出回っている。

 漁師は、どの魚がどこにどれだけいるかを正確に把握する必要があるため、魚の名前を細かく分類して呼ぶ必要がある。しかし、県内で水揚げされる魚は多品種で数量が少ないのが特徴。水揚げされた大量の魚をさばく仲買人は、魚種を細分化する必要はなく、品質、見た目、価格帯が同じ魚を総称して呼ぶ傾向が強い。また、末端の消費者にとって重要なのは味や価格であり、仲卸、流通の段階まで細分化して呼び分ける必要性もない。比嘉さんは「複数の要因が重なった結果、複数の魚種がひとつのカテゴリーに集約されきたのではないか」と推測する。

 市場における魚のしまくとぅば表記は今後も変わらないとの見方が根強いものの、県産魚の漁獲量減少により今後は市場から姿を消す魚が出てくることもあるだろうとの懸念もある。関係者は「結果、それがしまくとぅばの消失にもつながるのでは」と話す。

 そんな中、県産魚のしまくとぅば名の認知向上活動に取り組む人もいる。泊いゆまちのマルカ水産で営業を担当する上原一心さん(35)は2年前から「沖縄の魚を知ってほしい」との思いから“赤マチレッド”や“まくぶブルー”などしまくとぅば名の魚を独自のキャラクターに仕立て、イベントなどでPR活動に励んでいる。

 製作したキャラクターカードは約40種類。それぞれの魚の写真のほか和名や特徴などが書かれている。「県産魚やしまくとぅばが分からない世代にも分かりやすく、身近に伝えていくのが仲買人の役目。個人の活動には限界があるが、魚に興味を持つきっかけになれば」と期待を込める。