沖縄の自衛隊が様変わりしつつある。県民感情を考慮した復帰時の「民生重視の自衛隊」から、離島防衛に重点を置いた「戦える自衛隊」への転換だ。

 防衛省は2016年度予算の概算要求をまとめ財務省に提出した。要求額は当初予算比2・2%増の5兆911億円で、過去最大。海洋進出を強める中国を念頭に、「南西諸島シフト」を強める内容となっている。

 陸上自衛隊は、与那国島に第303沿岸監視隊(仮称)を新たに編成し、艦船や航空機に対する監視体制を整備する。沿岸監視部隊に加え宮古島には地対空ミサイル、地対艦ミサイル部隊を配備する計画である。

 航空自衛隊は、15年度に福岡県・築城基地の第304飛行隊を那覇基地に移動させる。これによって那覇基地には、今ある1個飛行隊とあわせ、2個飛行隊が配置されることになるが、この機会に現在の第83航空隊を廃止し、新たに第9航空団を編成する。

 現在進められている那覇空港の第2滑走路工事は、空自の増強計画を前提にしたもので、1本は自衛隊専用になる可能性が高い。

 復帰時の配備を除けば、これまでにない大規模な自衛隊増強計画である。

 政府が米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古への新基地建設に固執しているのはなぜか。「自衛隊増強」「新基地建設」を通して日米一体化を進め、中国に対抗しようとする姿勢が目立つが、この発想は危うい。

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 施政権返還に伴って沖縄に配備された自衛隊は当初、離島の救急患者輸送や不発弾処理など民生支援活動に力を入れ、地域に理解されることを重視してきた。

 自衛隊が様変わりし始めたのは、中国が経済・軍事両面で大国化し、海洋進出を強めてきたからである。

 安全保障法案を整備して集団的自衛権の行使を可能にし、日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)に基づいて日米一体化を進めていけば抑止力は強化される、と政府は主張する。

 ほんとうにそうだろうか。この見方には多くの疑問がある。第1に、沖縄の負担軽減が十分に考慮されておらず、逆に沖縄の「軍事要塞化」「不沈空母化」をもたらす内容になっていることだ。沖縄がめざす21世紀の将来像にもそぐわない。

 第2の疑問点は「安全保障のジレンマ」に陥る危険性が高いことである。

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 相手国に対する日中両国民の国民感情が最悪の状態にあるとき、一方が軍備を強化すれば他方も脅威を感じて軍備を強化することが多い。これが「安全保障のジレンマ」と呼ばれる現象である。

 実際、日中両国は首脳同士に信頼関係がなく、対話さえままならない状態だ。歴史認識をめぐる隔たりも埋まっていない。安倍政権は、東アジアの将来像をどのように思い描いているのだろうか。

 日中の間で何か事が起きた時、最も影響を受けるおそれがあるのは沖縄である。県民にとってその不安は切実だ。