2020年の東京五輪・パラリンピックのシンボルとなる公式エンブレムが白紙撤回されることになった。

 大会組織委員会は7月下旬、アートディレクター佐野研二郎氏のデザインを公式エンブレムとして発表したが、その直後にベルギー人デザイナーが自身が手掛けた同国の劇場ロゴと酷似していると指摘。使用差し止めを求め、現地裁判所に提訴している。

 内外の批判を打ち消すため、エンブレムを決める審査委員代表を務めた永井一正氏らが説明会を開き「(応募時の)原案は劇場ロゴに似ていなかった」と証言したが、逆に火に油を注ぐ結果となった。

 今度は原案が別の展覧会のポスターに似ていることや、エンブレムの活用例として提示したイメージ画像がネット上から無断流用していた疑いが出てきたからだ。佐野氏は無断流用については認めた。

 ネット上では佐野氏の過去の作品にさかのぼって写真や図柄などの模倣疑惑が次々挙がってきた。

 組織委の武藤敏郎事務総長によると、撤回は佐野氏から申し出たという。佐野氏は事務所のホームページで「模倣や盗作は断じてしていない」と強調し、撤回の理由を「批判やバッシングから、家族やスタッフを守るため」と説明している。

 東京五輪・パラリンピックのもう一つのシンボル、新国立競技場が不透明な建設費の膨張で白紙撤回に追い込まれた経緯と似ている。いずれも問題が発覚した時点で早めに手を打っておけば、国際的なイメージダウンを最小限に抑えることができた可能性がある。責任の所在をはっきりさせず、関係者の当事者意識に欠ける点も共通している。

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 理解できないのは、組織委が佐野氏の原案に類似する作品が存在することを確認しながら、2度にわたり修正することを要請し、現在のエンブレムとなっていたことだ。

 組織委は修正までさせてなぜ、佐野作品にこだわったのだろうか。類似作品の存在がわかった時点で次点繰り上げや新たな公募ができないか模索していれば、これほどこじれた末の撤回にはならなかったのではないだろうか。

 会見で責任の所在を問われた武藤氏は「全部の責任を押し付けるつもりはないが、選んだのは審査委員会だ」と審査委のせいにするとも受け取れるような返答をした。一方で「どこか1カ所に責任がある問題とは理解していない」とも語った。

 裏を返せば、どこにも責任がないと言っているのに等しく、組織委の姿勢はおかしいと言わざるを得ない。このような対応ではこれからの運営にも不安がつきまとう。

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 組織委はもう一度公募をやり直すことにしている。

 国内外の指定デザイン賞を複数回受賞していることなど応募資格を限定していたが、広く一般の人にも広げることを検討するようだ。

 選考過程をできるだけ公開し、一定程度絞られた時点で応募作品を誰でもみることができるようにすべきだ。選考に当たってはあらゆる段階で透明性を高める必要がある。