辺野古での工事が一時中断され、国と沖縄県の集中協議が行われている。ここで議論すべき事柄は多岐にわたろうが、本稿では、いま一度、米軍基地建設の法的根拠について考えたい。

 現在の政府は、「日米両政府の合意さえあれば、たとえ地元住民や自治体の同意がなくても、米軍基地の設置場所を決定できる」という法的認識を前提にしている。この認識が変わらない限り、いくら沖縄県が反対の意思を示しても、粛々と工事が進んでしまうだろう。それゆえ、この法的認識に十分な根拠があるのかを、しっかりと問い直さねばならない。

 まず、現行法には、「どのような基準で、誰が基地の設置場所を決定するか」を定めた明文規定はない。いずれかの場所に決定されたことを前提に、その土地を収用するための要件と手続きを定めた駐留軍用地特措法があるのみだ。

 ただし、日米安全保障条約実施のために締結された日米地位協定2条1(a)は「合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される」と定め、「個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない」とする。ここでは、場所の決定や設置条件は、日米両政府が締結する協定に定めるとされている。

 つまり、政府の法的認識をあえて根拠づけるならば、「日米地位協定により、政府に基地の設置場所の決定権限が付与されている」ということになるだろう。

 しかし、米軍基地の設置は純粋な外交活動ではなく、国内にも大きな影響がある。特に、地元自治体の自治権への制約は深刻だ。たとえば、沖縄国際大学のヘリ墜落事故や、8月の相模原市の基地火災の際には、地元の消防活動は制限され、自治体は原因究明・再発防止に主体的に関与できなかった。消防以外にも騒音や航空の規制、環境保護などの自治体の権限に制限が加えられる。

 憲法第8章が地方自治を保障しているにもかかわらず、地位協定を根拠に地方の自治権を制限することは、憲法違反ではないのか。日米地位協定は条約の一つであり、外国との約束にすぎない。国内法上の効果を発生させるためには、条約とは別に、憲法92条の「地方公共団体の運営」に関する事項として、法律を定める必要があろう。

 また、特定の自治体に不公平な自治権制約の負担が生じないように、どの場所で、どのように制限されるのかを詳細に規定するため、「辺野古基地設置法」のような個別の法律を制定すべきだ。そして、これまで議論してきたように、特定自治体の自治権を制限する法律は、憲法95条に基づく住民投票がなければ成立しない。

 占領時から存在する米軍基地については、独立・復帰の経過措置として、法律が整備されなかったことを正当化する余地もあろう。しかし、今回のような新基地建設については、十分な法的根拠が要求される。国と沖縄の協議の中では、今回の基地建設に十分な法的根拠があるのか、という点も一から見直す必要があるだろう。

(首都大学東京准教授、憲法学者)

=この連載は第1・3日曜日に掲載します。