菅義偉官房長官は8日の記者会見で県が検討している辺野古新基地建設の是非を問う県民投票で反対が多数を占めた場合でも「政府としてとるべき道はしっかりとっていくことに変わりはない」と答えた。県民投票が新基地建設の方針に影響しないとの認識を示したものだ。

 辺野古新基地建設をめぐる県と政府の集中協議が決裂した翌日の記者会見である。

 県民投票は検討の段階であるにもかかわらず、機先を制するかのような菅氏の発言は、辺野古に反対する人たちに無力感やあきらめを与えようとする考えに違いない。

 同時に、辺野古で続く陸と海上での抗議行動に加え、沖縄の民意が県民投票という形で表されることを恐れているようにも感じる。

 安倍政権の強権政治は民意を一顧だにしない。沖縄では昨年の名護市長選、県知事選、衆院選の4選挙区すべてで辺野古新基地に反対する候補者が勝利している。

 民意は圧倒的である。本来なら政府は辺野古新基地を断念するのが筋である。なのに、菅氏は協議期間中に工事再開を明言。政府のごり押しの姿勢がより鮮明になった。

 翁長雄志知事は第三者委員会の結論に基づき、前知事による辺野古埋め立ての承認取り消しを一日も早くすべきだ。新基地建設阻止は知事選の公約であり、躊躇(ちゅうちょ)する必要はない。

 県民投票にはさまざまな考えがあろう。「新基地建設を阻止するためのあらゆる手段」(翁長知事)の一つ、県民意思を表示するカードとして持っておきたい。

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 菅氏は同じ記者会見で、翁長知事が普天間問題の原点を「戦後の米軍による強制接収だ」と主張していることに対し、「賛同できない。日本全国、悲惨な中で皆さんがたいへんご苦労されて今日の豊かで平和で自由な国を築き上げてきた」と反論した。

 翁長知事はそんなことは全く言っていない。米軍に強制接収された土地であるのに、代わりの基地を差し出せというのはおかしいと指摘しているだけだ。菅氏の反論は、翁長知事の主張を曲解しているというほかない。

 県と政府の5回にわたる集中協議でのやりとりや菅氏の発言に接するにつけ、政府の沖縄への目線は何も変わっていないとつくづく思う。

 沖縄戦から70年である。沖縄が本土決戦の時間稼ぎのために「捨て石」にされ、県民の4人に1人が犠牲になった。

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 戦後も地続きだ。本土で米軍基地が減る一方で、沖縄では増えた。海兵隊も本土から沖縄に移駐してきた。

 新基地はなぜ、辺野古でなければならないのか。なぜ、強襲揚陸艦が寄港できる軍港機能を備えた新基地が必要なのか。政府は説得力ある説明ができない。森本敏元防衛相が述べたように普天間の移設先は「軍事的には沖縄でなくてもいいが、政治的には沖縄が最適な地域」なのである。

 中国の脅威をあおり、沖縄を軍事要塞(ようさい)化し、「捨て石」として子や孫が再び犠牲になるのではないか。歴史的体験に根差した懸念なのである。