電照菊の銅線を中心に農業用資材の盗難が本島中南部で多発している。特に中部は8月から今月上旬までの1カ月余りで8件と急増し、被害全体の6割が集中する。各農家は正月用キクの出荷に向けて苗を植え付けたばかり。JAおきなわは「この先も盗難が続けば正月用の出荷に致命的な影響が出る」と強い懸念を示す。JAは10日、沖縄市農民研修センターで緊急集会を開催。農家や沖縄署などが連携して盗難防止のためのパトロール強化に乗り出した。(仲田佳史、新垣卓也)

銅線の盗難被害の状況を説明するキク農家の島袋孝栄さん=10日、沖縄市内の農地

農業用資材の盗難防止でパトロール強化に乗り出すため、ガンバロー三唱をする農家や農協職員ら=10日、沖縄市農民研修センター

銅線の盗難被害の状況を説明するキク農家の島袋孝栄さん=10日、沖縄市内の農地 農業用資材の盗難防止でパトロール強化に乗り出すため、ガンバロー三唱をする農家や農協職員ら=10日、沖縄市農民研修センター

 JAによると、ことし6月から銅線や農業用パイプ、耕作機械などの盗難が発生。被害は14件、被害額100万円を超える。同じくキクを取り扱う県花卉園芸農業協同組合も被害7件、被害額は約100万円に上る。

 JA担当者は「北京五輪開催前にも鉄や銅の単価が上がり、同様の被害が多発した」と説明する。今回も換金目的であるのは間違いないとみるが「来年の開催地はリオデジャネイロ。五輪の影響とは考えにくい」と、今年急増する理由を探しあぐねる。

 金属リサイクル業の拓南商事によると、鉄の単価は前年比約2~3割減で、銅も前年より低い状況が続く。同社は持ち込みで金属を買い取る際、農家であるかを確認しており、担当者は「最近、持ち込みは少ない。他の業者に流れているのだろうか」と首をかしげる。沖縄署は各業者に不審な持ち込みがあった場合の情報提供を求めており、新里一署長は「総力を挙げて対応する」と気合を入れる。

 一方、農業用資材を盗まれる農家の状況は深刻だ。沖縄市池原のキク農家、島袋孝栄さん(52)は先月から今月6日まで、3回にわたり銅線380メートルを盗まれた。設置費用も含めると140万円の被害になるという。東日本大震災でのキク需要の低下や、県内農家の生産過剰などでキクの市場価格はここ数年、低価格で推移してきた。島袋さんは「この3~4年ずっと赤字経営。最近、ようやく価格が上がり、赤字返済のめどが立ってきたのに」と頭を抱える。

 キクは3、4日間、夜間の電照が途絶えると、開花準備に入るため出荷できなくなる。盗難で銅線を再設置して苗を植え替えても、出荷のピークには間に合わない。JA担当者は「出来心でも農業全体に与える影響は大きくなるのを知ってほしい」と話す。