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  • 「国民全体で日本の安全保障を考える気概も何もない」と翁長知事
  • 復帰の際にも基地の固定化を憂う屋良主席が同様の言葉で訴えた
  • 承認取り消しは過重な基地負担を強いる政府への抵抗権の行使だ

 翁長雄志知事は14日、記者会見し、仲井真弘多前知事が行った名護市辺野古の埋め立て承認を取り消す手続きに入ったことを明らかにした。

承認取り消しを表明する翁長雄志知事の会見には大勢の取材陣が詰め掛けた=14日午前10時8分、県庁

 第三者委員会の報告をもとに、なぜ辺野古なのかの根拠が示されず、環境保全措置も不十分だなどとし、「承認には瑕疵(かし)がある」と最終判断した。

 沖縄防衛局への意見聴取をへて、来月上旬にも正式に取り消す考えだ。

 会見で翁長知事は、海が埋められ基地が固定化し、沖縄が要塞(ようさい)化することに危機感を示し、「海上での銃剣とブルドーザーだ」と指摘。米軍普天間飛行場の移設をめぐり1カ月の集中協議を提案しながら、不誠実な対応に終始した政府への不信感をあらわにした。

 「国民全体で日本の安全保障を考える気概も何もない」「沖縄の歴史、県民の心、基地形成の経緯を話しても、返ってくる言葉はほとんどなかった」

 翁長知事の説明を聞いていて、ふと思い起こしたのは、復帰の前年、琉球政府が沖縄の声を日本政府に伝えるため作成した「復帰措置に関する建議書」のことだ。

 「沖縄返還協定は基地を固定化するものであり、県民の意志が取り入れられていない」「沖縄はあまりにも国家権力や基地権力の犠牲となり手段となって利用されてきた」

 建議書を携えて屋良朝苗主席が上京したその日、国会で返還協定が強行採決され、建議書は生かされなかった。

 44年後に今度は翁長知事が同様の言葉を繰り返したのである。

 承認取り消しは、沖縄だけに過重な基地負担を強いる政府の理不尽な政策への「ノー」の意思表示であり、合法的な抵抗権の行使だ。政府と県の関係、米軍基地と地方自治の在り方を根底から問う重大な問題提起でもある。

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 集中協議では普天間問題の原点がどこにあるかが大きな論点になった。

 米軍による土地の強制接収を説明する翁長知事に対し、菅義偉官房長官は1996年の日米合意が原点との考えを示し、譲らなかった。

 「魂の飢餓感」という言葉を使って県民の心情に理解を求め、「沖縄を領土としか見ていないのではないか」と訴えた言葉は政府には届かなかった。

 それどころか、日本の主権の及ばない米軍支配の下で基地が建設されたことを強調した翁長知事に対し、何を思ったのか菅氏は「戦後は日本全国が悲惨な中、皆が大変苦労して平和な国を築いた」ととんちんかんな反論。苛烈な沖縄戦、続く27年間の米軍支配で人権が侵害され続けてきた沖縄の戦後史に対する無理解と認識不足を露呈した。 

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 これほど米軍の専用施設が集中する地域は沖縄だけである。

 米軍基地が集中することによって住民は米軍による事件事故や航空機墜落の不安、騒音被害などに日常的にさらされているが、問題はそれだけにとどまらない。

 2013年8月、宜野座村のキャンプ・ハンセンで起きた米空軍ヘリ墜落事故で、県の土壌調査が認められたのは事故から7カ月後だった。現場近くの大川ダムでは1年余りも取水停止を余儀なくされた。

 辺野古沖の臨時制限区域に国が投下したコンクリートブロックがサンゴ礁を傷つけているとして、県が求めていた潜水調査が認められたのも申請から5カ月以上たってから。その臨時制限区域は反対派住民を閉め出そうと、昨年、日米両政府が一方的に設置したものだ。 

 基地があることで、さまざまな場面で住民生活が制約され、地方自治が侵害されているのである。これは明らかに憲法の精神に反する。

 承認取り消し手続きの開始によって、辺野古新基地問題はこれまでとは異なる新たな段階に入った。この先、国との法廷闘争は避けられそうにない。

 民意を背景に信念を貫く知事への支援の輪をどのように広げていくか、反対運動を続ける市民団体にとっても正念場を迎える。