翁長雄志知事は14日の記者会見で、前知事が行った名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消すことを表明したが、歴史的な決断を後押ししたのは、民意の変化である。

 変化は、さまざまな分野で観察することができる。

 県企画部が2012年10月に実施した県民意識調査によると、在日米軍基地の集中を差別的状況だと思うかとの問いに「そう思う」と答えた人は49・6%、「どちらかと言えばそう思う」は24・3%で、差別的だと答えた県民が7割を超えた。

 そもそも、安保容認を公言する根っからの保守政治家が辺野古への新基地建設を阻止するため「あらゆる手段」を行使する、と主張すること自体、保革対立の構図が支配的だった冷戦期には考えられないような空前の変化である。

 県内革新政党の支持率は全体としては決して高くなっていないにもかかわらず、昨年の名護市長選、知事選、衆院選で「辺野古反対」を訴える候補が完全勝利したのは、保守層や無党派層がなだれ現象を起こしたからだ。

 1996年の返還合意から今年で19年になるが、翁長県政誕生以降に起きている事態は、これまでとまったく様相が異なる。

 民意に支えられたその徹底性ゆえに、沖縄の異議申し立ては、その場を取り繕うだけの弥縫(びほう)策や振興策との取引などではもはや収拾できない。 「Aの施設をBに移す」といったような不動産的解決ではなく、米軍基地の在り方や地位協定を根本から見直すなどの外科的取り組みが必要だ。

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 県と政府が基地問題をめぐって抜き差しならない対立関係に陥ったのは今回が初めてではない。

 大田昌秀元知事の時もそんな時期があった。未契約米軍用地の強制使用手続きをめぐって政府と県が争った代理署名訴訟は、全国的な注目を集めた。

 稲嶺恵一元知事も、県がまとめた軍民共用などの条件付き県内移設案が政府の一方的な判断で反古(ほご)にされて以降は、政府との折り合いが悪くなり、代替施設のV字案(現行案)には賛成しなかった。今回の翁長知事の承認取り消しは、過去にない熾烈(しれつ)な対立になるはずだ。

 自民党の中には、自民党を出て行った翁長知事に対する感情的な反発が今も根強く残っている。知事の得点になるようなことはするな、という感情むき出しの対応が対立を深めている点も見逃せない。

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 政府は、埋め立て承認の取り消しには従わず、法的な対抗手段を講じた上で、早急に埋め立て本体工事に着手する予定である。反対行動の激化を想定して海上保安庁の海上警備を強化するかもしれない。そのとき、どういう事態が発生するか。深く懸念するのはその点である。

 政府は沖縄の奥深くで生じている民意の変化=地殻変動を見誤ってはいけない。海上で不測の事態が起こる可能性があることを承知の上で、それでもなお埋め立て工事を強行すれば、日米同盟そのものが深刻な危機に直面するだろう。