「業績を上げるよう上司の要求が高くなり、正社員より働かされた」。数年前、非正規で働いていた知人が会社を辞めた理由をこう話した。時間の融通が利き、子育て中にはありがたい職場と思ったが、少ない正社員に代わり過重な責任だけを負わされることに疑問を持ったという

 ▼企業が派遣労働者を長期にわたって雇用できる改正労働者派遣法が成立した。「一般」「専門」の業務区分を廃止し、3年ごとに人を変えれば、企業側は派遣をずっと使えるようになる

 ▼企業にとって「都合がいい」内容で、専門家は正社員になれずに“生涯派遣”につながりかねないと指摘。雇用の不安定や正社員がやってきた仕事を派遣労働者に代える懸念もある

 ▼県内の非正規労働者の割合は約44%で全国一高い。若年者では約2人に1人が非正規で働いている。低賃金の課題もある中で、派遣の固定化の不安が残る

 ▼改正法では派遣会社に雇用安定措置も盛り込んだ。3年の期限を迎えた労働者の雇用を企業に依頼することなどを義務付けるが、正規雇用の保障はどこにもない。働く側の視点に立った措置とは言い難い

 ▼働き方や雇用形態の多様化が進むのは避けられない。だが、優先されるべきは労働者を守る環境をつくることだろう。「人こそ最大の資産」。経営学者ドラッカーの言葉が頭をよぎる。(赤嶺由紀子)