旧日本軍の「従軍慰安婦」問題を巡る日韓合意を検証していた韓国政府の作業部会が報告書を公表した。

 報告書は「韓国政府は被害者の意見を十分集約せず、主に政府の立場から決着させた。被害者が受け入れない限り、政府間で慰安婦問題の『最終的・不可逆的な解決』を宣言しても問題再燃は避けられない」と結論付けた。

 元慰安婦との意思疎通を欠いたことを問題視したほか、朴(パク)槿恵(クネ)前大統領について「慰安婦問題を日韓関係全般と結び付けて解決しようとし、むしろ関係を悪化させた」と稚拙な外交を批判した。

 報告書は合意内容について「日本政府の責任を『道義的』という修飾語なく明示したことは、河野談話などに比べ進展した」と評価。一方で「日本側は合意直後から韓国に設立された財団への拠出は法的責任による賠償ではないと主張。責任問題が完全に解消されない限り、被害者が受給したとしても慰安婦問題が根本的に解決されたとは言えない」と指摘した。

 今回、合意に非公開部分があったことも明らかにした。日本側がソウルの日本大使館前に慰安婦問題を象徴する少女像を建てた市民団体の説得を要請し、韓国側が事実上受け入れていることだ。

 団体から強い反発を呼ぶのは間違いない。

 報告書を受けて韓国政府が合意破棄や見直し要求に踏み出せば日韓関係は制御不能な混乱に陥るだろう。

 ただ報告書はそこまで踏み込んでいるわけではない。両国国民の感情的な対立をエスカレートさせないためにも、両政府は冷静な対応に徹してもらいたい。

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 2015年12月の日韓合意で、日本は軍の関与と政府の責任を認め、安倍晋三首相が「心からのおわびと反省」を表明した。元慰安婦を支援する財団に10億円を拠出し、「最終的かつ不可逆的な解決」をうたったものだ。

 元慰安婦の7割以上が財団からの現金支給に肯定的な反応を示す一方、受け取りを拒否した人もいる。

 元慰安婦は高齢化が進み、残された時間は少ない。大切なのは筆舌に尽くしがたい苦しみを強いられた元慰安婦の名誉や尊厳を回復し、心の傷を少しでも癒やしていくことである。

 しかし首相が「心からのおわびと反省」を表明したにもかかわらず、国内では在日コリアンに対するヘイトスピーチ(憎悪表現)が後を絶たず、ネット上では「従軍慰安婦は捏造(ねつぞう)だ」などとする言説が飛び交っている。

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 日韓両国は未来志向の関係を目指すが、首脳同士の相互訪問が途絶えて久しい。

 緊迫する北朝鮮情勢への対応で、本来なら首脳同士の緊密な対話があってしかるべきだ。だが今は関係修復の糸口さえ探るのが難しい状況だ。

 韓国政府は来年2月に開かれる平昌冬季五輪まで、今後の方針を打ち出すことは先送りするという。

 日本政府は韓国政府の国内向け対応を見守りながら、政府間同士の合意履行の重要性を訴えてもらいたい。