2017年12月、箏曲の全国コンクールで最高賞にあたる「賢順賞(けんじゅんしょう)」を獲得した琉球伝統箏曲琉絃会の池間北斗さん。24回目となるコンクールで琉球箏曲奏者として“初参加・初優勝”の快挙を達成した。「名前が呼ばれたときには、まさか、とびっくりした」と喜ぶ若き奏者は、「審査員から『沖縄の空気を感じました』と言われた。琉球箏曲の可能性を広げるよう頑張りたい」と気を引き締めている。(沖縄タイムス社・真栄里泰球)

賢順賞の舞台で「沖縄の箏は可能性があると思った」と話す池間北斗=沖縄タイムス社

独唱する箏の池間北斗=浦添市・国立劇場おきなわ小劇場

賢順賞の舞台で「沖縄の箏は可能性があると思った」と話す池間北斗=沖縄タイムス社 独唱する箏の池間北斗=浦添市・国立劇場おきなわ小劇場

◆和箏の全国コンに、琉球箏曲で挑んだ

 コンクールは近代箏曲の祖と言われる室町時代後期の僧・賢順を記念する賢順記念全国箏曲祭の中で開催され、新進演奏家の発掘と育成を目的としている。福岡県久留米市で開催された本選では、42人の応募者から予選を突破した25人が競った。

 琉球の箏曲は、稲嶺盛淳が、1702年に薩摩で学んだ八橋流を伝えたことが始まりとされる。「八橋流」の祖・八橋検校(けんぎょう)は賢順の孫弟子にあたる。箏曲は、琉球王国時代から古典音楽に欠かせない存在として受け継がれ、1972年に「県指定無形文化財」、2016年に国の「記録作成などの措置を講ずべき無形文化財」となった。現在の大和の箏曲とは絃の張り方や爪の形、奏法などに違いがあり、柔らかく、優しい音色に特長があるとされる。国の文化財に選択された際には、我が国の箏曲の歴史を知る上で貴重な伝承と評価された。三線などの伴奏のほか、独自の古典曲として段の物7曲、歌物3曲が継承されている。

 池間さんは雑誌「邦楽ジャーナル」でコンクールの存在を知り、「力試しと、琉球箏曲を知らせたいという思いもあった」と参加を決めた。音源審査による予選の課題曲は大和の箏曲の代表的な「六段の調」だったが、琉球箏曲段の物の一つ「六段菅攪(すががち)」で応募した。「六段」という名前は似ているが曲調に相違がある。事前に事務局などに問い合わせることなく、「音源を送れば、聞くだけは聞いてくれるだろう」と考えた。

◆アウェーの舞台で「らしさ」発揮

 本選出場者は、池間さんを除く24人が和箏奏者。付き添い無しで参加した池間さんは、楽屋の練習風景を見て、「アウェーでした」と振り返る。リハーサルで雰囲気を確かめ、一般公開された本番では固くならずに演奏できたという。

 「勝負するには琉球を出すしかない」と自ら構成した「千鳥」で挑んだ。「下千鳥」、「浜千鳥」、「南洋浜千鳥」を組み合わせた楽曲。琉球音階の良さを押し出し、「弾きながら歌うのも沖縄の箏曲の特長」との考えからだ。大和ではあまり見かけない、装飾が施された「長磯」という種類を使い、衣装は琉球古典音楽の正装「黒朝」をまとった。

 舞台に長磯が据えられると、会場の視線が集まるのを感じたが、「今、弾けるものを弾こう」との気持ちで臨んだ。箏も曲も衣装も琉球を意識した挑戦なだけに、結果はあまり期待していなかった。「いただけるなら特別賞かな」と思っていた。賢順賞に決まり「え、オレが」と驚いたが、審査員からの評価に加え、聴衆からも「柔らかな音色が景色を描写して落ち着きました」と感想があり、伝わったと手応えを感じた。(賢順記念全国箏曲祭のHPはこちら

◆充実した2017年、ことしは・・・

 2017年は沖縄タイムス社が主催する沖縄タイムス伝統芸能選考会で最高賞、所属する琉球伝統箏曲琉絃会の師範にもなり、実演だけでなく、背景となる学問や演奏家としての在り方も考える節目の年となった。「より気を引き締めて弾くようになった」と振り返る。箏曲を引き継いできた先達や、又吉貞子師匠をはじめとする指導者に感謝しつつ、「舞台を一生懸命やるのは当たり前、古典もしっかり勉強したい」と抱負を語った。

 1月8日には京都で「組踊音楽歌三線」の人間国宝・西江喜春の独唱の伴奏を務める。「西江先生とは初めて。先日、ご指導いただきましたが緊張しています」と話す。「箏は三線の伴奏楽器としては縁の下の力持ちというか、音楽を取り巻くイメージがある。また、独奏の段の物などもあり、沖縄の箏は可能性のある楽器だと思う」と発展を思い描く。沖縄に戻ってから、ある先生に「これからが大変だよ」と声を掛けられたという。精進への決意が新たになった。

 【プロフィル】いけま・ほくと 1989年那覇市生まれ。琉球伝統箏曲琉絃会師範。又吉貞子に師事。沖縄県立芸術大学卒。国立劇場おきなわ第1期組踊研修修了生。沖縄タイムス芸術選賞箏曲の部最高賞。第24回賢順記念全国箏曲コンクール賢順賞。1月8日に「京都国立博物館開館120周年記念公演 琉球古典 たまゆらの世界」、4月7日に有志による「男性舞踊家公演 蓬莱」、7月に東京での賢順賞受賞者公演ほか、国立劇場おきなわ主催公演などが予定されている。