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  • 基地の見返りに振興予算を投下する「補償型政治」は限界にきている
  • 新基地建設強行は沖縄の自治を破壊し、安保体制にも打撃を与える
  • 現状打開のため米国は日本政府に計画見直しを働き掛けるべきだ

 翁長雄志知事は21日、スイスで開かれた国連人権理事会に出席し、名護市辺野古の新基地建設反対を訴えた。

国連人権理事会で演説する翁長雄志知事=21日、スイス・ジュネーブ

 英語で2分程度、日本語にすると430字余りの短い演説だったが、これまでの主張が濃縮された内容だった。

 国連の場で沖縄県知事が基地問題を訴えるのは初めてのことである。苦難の道を歩んできた沖縄の人々の痛切な思いを代弁した歴史的なスピーチであり、高く評価したい。

 沖縄は1945年、敗戦によって米軍に占領され、施政権が返還されるまでの27年間、日本国憲法の適用を受けない「無主権・無権利」状態に置かれた。基地のほとんどは、その間に建設された。

 「基地の中に沖縄がある」と表現されるほど米軍基地が集中し、米軍機の墜落事故や米兵による事件が絶えなかった。復帰前の沖縄は、軍事政策がすべてにおいて優先された「軍事植民地」だった。

 沖縄の人たちは国連憲章や世界人権宣言、日本国憲法などを根拠に「自治・人権」を求める闘いを続けてきた。 

 しかし72年の復帰は施政権を返還する代わりに、基地の自由使用・長期継続使用を認めるものであった。

 翁長知事の演説で注目したいのは「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」との現状認識に立ち、「自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのでしょうか」と沖縄だけに過重な負担を強いる政府の安全保障政策を厳しく批判した点だ。

 知事は演説で「あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟です」とあらためて強調した。退路を断ち、政治生命をかけて、問題に取り組む強い意志を示したのである。

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 辺野古新基地建設をめぐって浮上したのは、沖縄戦から続く沖縄への差別的処遇だ。

 かつて防衛事務次官を務めた久保卓也氏は「基地問題は安保に刺さったトゲである。都市に基地がある限り、安保・自衛隊問題について国民的合意を形成するのは不可能」と述べ、基地が沖縄に集中する理由を明らかにしたことがある(『マスコミ市民』95年11月号)。

 安倍晋三首相の外交・安保のブレーンだった元駐タイ大使の岡崎久彦氏は、沖縄の置かれた状況を船に例え「沖縄の人が怒っているのは自分たちの部屋がエンジンルームに近くて、うるさくて暑い。これは不公平だと言っているわけです。どうせ誰かがエンジンルームの側に住むわけだから、それに対する代償をもらえばいい」と話した(『ボイス』96年2月号)。

 沖縄に米軍基地を集中させる見返りに振興予算を投下する手法は「補償型政治」と呼ばれる。その補償型政治が今、限界にきている。

 昨年の名護市長選、知事選、衆院選で示されたのは新基地建設に反対する沖縄の民意であり、補償型政治への拒絶反応だ。

 県企画部が2012年に実施した県民意識調査で、米軍基地の沖縄集中に7割を超える県民が差別的と答えていた。本紙などが今年6月に実施した調査では辺野古移設への反対が66%に上った。 

 沖縄の民意は10年ごろを境に、この基調が続いている。

 翁長知事は圧倒的な民意を背景に、あらゆる手段を使って新基地建設を止めると公言する。もはや辺野古への基地建設は不可能だと見なければならない。

 それを押し切って日米両政府が新基地建設を強行するようなことがあれば、沖縄の地方自治はずたずたに破壊され、安保体制にも大きなダメージを与えるのは確実だ。

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 演説で翁長知事は少数意見をかき消す日本の民主主義に疑問を投げた。それはもう一方の当事者である米国に向けられた言葉でもある。

 日米地位協定は米軍に対し「公共の安全に妥当な考慮を払わなければならない」と義務付けている。

 米軍に基地の使用者責任があることを忘れてはならない。そのことを自覚した上で、現在の深刻な状況を打開するため日本政府に計画見直しを働き掛けるべきだ。