戦争に協力した反省から、軍事研究とは一線を画してきた大学の研究者のあり方が変わるのではないか。そんな懸念が消えない。

 防衛省は軍事技術として応用可能な基礎研究に研究費を支給する公募をしていたが、少なくとも16大学が応募していたことが共同通信のアンケートで分かった。

 公募は最初から軍事技術への応用が可能な基礎研究とうたっている点が特徴だ。「安全保障技術研究推進制度」というのが正式名称で、防衛省が本年度から導入した。7月に募集を開始。28項目の研究課題について公募していた。

 「昆虫あるいは小鳥サイズの小型飛行体の実現」「微生物や化学物質を数十メートルの距離から検知識別」などが研究テーマである。

 軍事研究に大学を取り込む方針は、2013年12月に閣議決定された防衛計画大綱がすでに示している。「大学や研究機関との連携の充実等により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努めるとともに、民生分野への防衛技術の展開を図る」

 デュアルユースとは、生活を豊かにする民生と軍事のどちらにも利用できるという意味だ。主な研究テーマからも想定できるように、「もろ刃の剣」である。

 国立大学は法人化に伴い交付金が減少している。そこに防衛省からの公募である。本年度、約3億円が計上されており、1件当たり年間最大3千万円支給され、文部科学省の科学研究費補助金などと比べると破格である。研究者の気持ちは揺らぐに違いない。

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 軍事技術に応用可能な研究をうたった公募に安易に乗るのは、学問の自由を捨てるのに等しいのではないか。

 各分野の最高水準の専門家が集う日本学術会議は戦後の1949年の発足総会で、科学者が戦争に協力してきたことを強く反省し、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献する趣旨の決意表明をした。

 50年には「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」、67年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を繰り返し出している。

 先の大戦に深く関わった反省を踏まえ、科学者の「社会的な責務」を表明したものであろう。

 安倍政権は昨年4月、武器輸出三原則を撤廃し、防衛装備移転三原則を定めた。武器輸出の条件を緩和し、共同開発に道を開くものである。

 10月には研究開発を所管する防衛省の外局として防衛装備庁が新設される。

 今回の公募はこれらの動きに連なるものである。

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 英国の科学誌が「日本の学術界、軍事の侵入を懸念」と題して報じている。

 防衛省は研究成果の公開を原則としているという。だが、特定秘密保護法が施行されている。十分に情報公開されるかどうか、額面通りに受け取るわけにはいかない。

 研究は「学問の自由」の下でなされ「国策」に取り込まれることではあるまい。研究者のモラルも問われている。