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  • 政府は辺野古など「久辺3区」へ直接振興策を実施する方針
  • 基地周辺対策費を充てる考えだが制度の趣旨と矛盾する
  • 名護市の頭越しに地域を分断するやり方は地方自治の侵害だ

 政府が、名護市辺野古の新基地建設予定地周辺の辺野古、豊原、久志の「久辺3区」へ直接、振興策を実施する方針であることが分かった。基地周辺対策費を特例で充てる考えだが、税金の使い道として強い疑問が残る。

 久辺3区は昨年8月、新基地建設の海底ボーリング調査の開始を受け、仲井真弘多前知事へ「下水道などの整備」「公園や集会所の整備」「基地負担に見合った住民への補償」など18項目の要請書を提出した。

 前知事が辺野古埋め立て容認を表明する約4カ月前。前知事は「国へも行きましょう」と応じ、3区の代表者を伴って同9月に菅義偉官房長官と面談。その場で3区は要請書を提出し、前知事による埋め立て承認後には政府と3区が直接話し合う懇談会が初めて開催された。

 「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」(環境整備法)によると基地周辺対策費は、基地や軍事訓練による影響を緩和するために充てる費用だ。

 だが、今回の振興策へ基地周辺対策費を充てるのはおかしい。

 同対策費は、あくまで基地や訓練の存在による損害補填(ほてん)を目的としたものであり、3区が要望の根拠とする「新基地建設を容認する条件」への支出の根拠とはなり得ないからだ。

 この矛盾については政府関係者も「ハードルが高い」と認めている。公金支出の不適切なあり方として、補助金適正化法違反の指摘も受けかねないだろう。財政規律を著しくゆがめる措置である。

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 政府は米軍再編で基地負担が増す自治体へ、計画の進捗(しんちょく)に応じて再編交付金を支給している。県内では名護市などが対象だが、新基地建設に反対する稲嶺進市長の就任後、交付されていない。

 基地周辺対策費を振興策に充当する方法は、久辺3区に直接支給するためだとするが、こうしたあり方も疑問だ。

 地域振興は本来、調和のとれた開発を行わなければならない。そのため自治体や県の計画に基づく実施が法や制度で定められている。久辺3区への直接の振興策は名護市の頭越しであり、政府による地方自治の侵害である。

 政府関係者によると振興策による事業は、公民館の改修・増築や、米兵との交流などという。しかし両事業が地域振興に必要なら、市を通して実施すればよいのである。地域振興は本来、地元で話し合うべきだ。

 今回実施される事業に、特例を適用しなければならない理由は見当たらない。

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 米軍基地を受け入れる見返りに振興策を投入する「補償型政治」の典型である。SACO(日米特別行動委員会)以降、振興事業が次々投入されたが、成功したとは言い難い。各種選挙で示されているように補償型政治に対する県民の視線は厳しくなっている。

 そんな中、制度の趣旨をゆがめてまで久辺3区に振興策を投入しようとする政府の態度は、地域を分断する狙いがあるというほかない。