月162・5時間の残業の末、職場のトイレで自殺を図った総合物流業の沖縄県内企業で勤務する男性(42)=沖縄本島南部=が労災認定されたのは、妻との携帯メール459通が決め手だった。仕事で昼夜問わず家にいなかった男性と「唯一の接点」(妻)だったメールのやりとり。タイムカードなど出退勤時刻の記録がない中で「何とか夫が働いた時間を証明したい」との一心で、妻は一週間、眠らずに携帯の一画面、一画面の写真を撮った。(篠原知恵)

出退勤時刻の記録がなくても、メールのやりとりが証拠となることも

 「このままではいけない」。妻がそう思ったのは昨年3月29日。残業で午前4時半すぎに退勤した後、仮眠せず同8時半に出勤した男性が職場で自殺未遂した日だ。

 十数カ所手首を切っていた男性に、職場関係者は救急車や警察を呼ばず、車で男性を病院へ連れて行き、病院側には「会社と関係のない事故」と話した-と人づてに聞いた時だった。会社の無責任な対応に怒りで震えた。

 どうしていいか分からず、県消費生活センターなど手当たり次第の相談窓口に電話をかけた。でも「ここではありません」と返ってくるばかり。途方に暮れている時、親類から紹介された連合おきなわユニオンで「メールが証拠になるかもしれない」と助言を受けた。

 持っていなかったパソコンを買い、法律事務所と二人三脚で携帯のメール画面を保存して労災の申立書類を完成させた。

 会社を相手に立ち上がるまで、夫の自殺未遂を「恥ずかしい」「自分たちが弱いから挫折したんだ」とさえ思っていた。

 だが今は「認識違いだった」と前を向く。残業続きでろくに寝ていない夫が事故を起こしていないか。ただただ心配で、頻繁にやりとりしていた携帯メール。「たまたま消さずに残っていて、本当に良かった」と言葉を選んだ。