岸田文雄外相とカーター米国防長官が現地時間の28日、米ワシントンで米軍基地への立ち入り調査に関する「環境補足協定」に署名する。

 協定の内容は、基地内で環境汚染事故が発生した場合と返還前の立ち入り調査の二つに大きく分かれる。

 環境汚染事故の立ち入り調査は、一言でいうと、米軍の一方的な判断に委ねられているということだ。

 外務省の資料にこんな表現が出てくる。環境汚染事故の通報(米↓日)を受け、日本側(国、自治体)は現地視察を要請できる。米側は日本側の要請に対して全ての妥当な考慮を払い、可能な限り迅速に回答する。日本側はサンプル入手を要請できる-と。

 「視察」は見るだけのニュアンスが強く、調査する語感から程遠い。「妥当な考慮を払い、可能な限り迅速に」「要請できる」という表現は、日本側が求めても実現するとは限らないとしか読めない。

 嘉手納基地や普天間飛行場の騒音防止協定に実効性が伴わないことからも分かるように抜け道の表現をつくるのは日米両政府の常とう手段だ。

 1996年から県が求めた立ち入り調査のうち8件が拒否されている。遅れも目立つ。辺野古新基地建設に向けた政府の作業でサンゴ破壊の可能性を調べるため県が申請していた調査が認められるまで5カ月以上かかった。宜野座村のキャンプ・ハンセンでのヘリ墜落事故で土壌調査ができたのは7カ月後。キャンプ・コートニーのクレー射撃の鉛汚染に至っては許可は8年後。もはや調査とは呼べない。

 そもそも環境汚染事故が米側から漏れなく日本側に伝えられるのか。疑問符が付く。

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 協定のもう一つの柱である返還前の基地立ち入り調査は県の要望と開きが大きい。

 外務省資料には「約7カ月を超えない範囲で、通常認められる」とある。県は跡地利用を円滑に進めるため「少なくとも3年前」からの立ち入り調査を求めていた。「通常」という言葉が気になる。認められない場合もあるというように読めるからだ。

 今後返還が予定されている嘉手納基地より南の5基地については「日米間で別途合意すれば、約7カ月よりも前の段階から立ち入り可能」としている。これも「日米間で別途合意」の条件が付く。

 米軍が戦後ずっと使ってきた基地だ。深刻な環境汚染が発生している可能性が高い。沖縄市のサッカー場から環境基準値を超えるダイオキシン類が入った大量のドラム缶が発見されている。返還後に有害物質が検出されるケースが後を絶たないのが現状だ。

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 韓米地位協定を結ぶ韓国では「環境条項」が創設され、自治体が立ち入り調査する「共同調査権」がある。

 旧行政協定が改定され60年に日米地位協定となったが、不平等性は何も変わらない。日本政府は「補足協定は初」と自賛するが、内実は韓国に後れをとっている。

 「憲法・国内法」の法体系は、「安保・地位協定」にゆがめられ、環境権、地方自治が侵害されている。不十分な補足協定というほかない。