文部科学省の前川喜平前事務次官は、2011年に起きた八重山教科書問題について「竹富町に対する是正要求は理不尽。正当な根拠はないと思っていた」と述べ、大臣や政務官の指示は不当だったとの認識を示した。前川氏が実務を担当した教科書無償措置法改正については「表向きは竹富町のような自治体が出るのを防ぐためとしつつ、教科書の共同採択の枠組みを弾力化して竹富の『違法状態』を解消できると考えていた。面従腹背かもしれないが、安倍政権になって強まった不当な政治介入を収束させるためだった」と明かした。(社会部・鈴木実)

「教科書無償化措置法改正は、不当な政治介入を収束させるためだった」などと語った前川喜平氏=那覇市内

法改正「不当な政治介入を収束させるため」

 5日までに、沖縄タイムスの単独取材に応じた。当時の幹部官僚が実名で国側の対応を批判するのは異例。竹富町を教科書無償措置の対象外とした判断や、地方自治法に基づく是正要求という強権的な手法が改めて問われそうだ。

 八重山教科書問題は11年、石垣市・竹富町・与那国町の3市町で構成する共同採択地区の協議会が、愛国的な内容が多いとされる育鵬社の中学公民教科書を選んだのがきっかけ。竹富町は市町村教育委員会に採択権があるとする地方教育行政法を盾に別の教科書を選んだが、文科省は地区内で同一の教科書を使うよう求める無償措置法に違反するとして協議会決定に従うよう求め、14年の竹富町分離まで対立が続いた。

 前川氏は「当時の制度では協議会の結論はあくまでも答申であり、最終的な決定権は各教委にあった。地区内で意見がまとまらない事態を法律が想定しておらず、文科省も当初は竹富町が自前で別の教科書を購入して無償給与することまでは違法としなかった」と説明。「それが12年に民主党(当時)から安倍政権に移行し、下村博文氏が文科大臣、義家弘介氏が政務官になると、育鵬社の教科書を事実上強いる姿勢に変わった。是正要求に法的な根拠があるとは思えず、竹富町が国地方係争処理委員会に持ち込めば町側が勝つはずだと思っていた」と振り返った。

 無償措置法改正については「もともと採択地区を郡単位としていた法律が時代に合わず、以前から少なくとも町村単位に変更する必要性が議論されていた。表向きは『長年の懸案を解消するためであり、八重山教科書問題とは関係ない』『改正後も八重山地区は一つであることが当然』という説明をしていたが、法案が通れば竹富町を分離して問題を収束させられると考え、沖縄側とも調整していた」と証言した。