「ヒーヤーイ、ユイ」「ハーイヤ」。沖縄県内のさまざまな祭りには、「ヤグイ」と呼ばれる掛け声が欠かせない。南風原町喜屋武では「けんか綱」と呼ばれる激しい綱引きが約1200人の区民総出で繰り広げられる中、荒々しいヤグイが夏の夜空に響き渡る。また沖縄角力(ウチーナージマ)では、観客がヤグイを発して会場を盛り上げる。ほかにも闘牛やエイサーなどあらゆる沖縄の伝統行事に、しまくとぅばによる魂の声が花を添えている。(運動部・當山学)

綱引きの勝利を喜び、綱を掲げながら広場を練り歩く東の住民ら=2011年7月、南風原町喜屋武

綱引きへの思いを語る大城和喜さん=南風原町喜屋武の自宅

沖縄角力のヤグイの魅力を語る大道智さん=金武町金武の自宅

綱引きの勝利を喜び、綱を掲げながら広場を練り歩く東の住民ら=2011年7月、南風原町喜屋武 綱引きへの思いを語る大城和喜さん=南風原町喜屋武の自宅 沖縄角力のヤグイの魅力を語る大道智さん=金武町金武の自宅

◆「ヒーヤーイ」「ユイ」 喜屋武の綱引き

 「サーイ、サーイ」と声を合わせて引く喜屋武の綱引き。南風原町文化協会会長の大城和喜さん(68)は物心ついた時から、綱引きが生活の中心にあった。

 「綱引きが私をつくってくれた。綱引きが終わると、あと364日待っているぐらい、血や肉になっている」と思いを語る。

 ヤグイについての思いも熱い。「『もう行くよ』『綱を担ぐよ』というときに、かね打ちが『ヒーヤーイ』と言うと、一斉に『ユイ』と力を合わせて綱を持ち上げる。非常に盛り上がる言葉で、沖縄人としての血が騒ぐ」。宴会やスポーツなどでも、始めるときや全員をまとめるときに、今でも使っているという。

 大城さんは、「ヒーヤーイ」は奮い立たせる「ひやみかせ」から、「ユイ」は「結」からきたとする。綱を持って行進するときの「ハーイヤ」にも意味を見いだす。

 琉舞の伊野波(ヌファ)節に出てくる女性の悲しみの所作「ハイヤマーター」と語源が同じとする。「落ち込んでいるとき、沈んでいるときにあえて頑張る、盛り上げる言葉で、自然発生的に使われるようになったのではないか」。起源については「いつからか分からないから魅力」と、使い始めた先人たちに思いを巡らせる。

◆「シタイヒャー」「ヘークナゲレー」 沖縄角力

 約600年の歴史があるとされる沖縄角力の魅力の一つはヤグイだ。指笛や拍手とともに、「ヘークナゲレー(早く投げろ)」「テーハナサンケー(手を離すな)」と、はやす。見事に勝負がついたら「シタイヒャー」と選手をたたえる。

 県角力協会金武支部長の大道智さん(62)は、全島大会の会場で16年間、解説を担当し、会場の雰囲気を盛り上げる役割も務めた。会場がシーンとなった時、「どうぞヤグイ掛けてください」と呼び掛けた。「ヨーバーグヮー(弱いやつめ)」など、心ないヤグイが出たときに観客を制した。

 琉球王国時代から続く行事とあって、技の名前も「ムルメーガキ(相撲では二丁投げ、柔道では大外刈り)」「フカヌシ(相撲では下手・上手投げ、柔道では大腰)」など、用語は全てしまくとぅば。全島大会では技の名前を統一しているが、各地域ではそれも違ってくる。

 大道さんは「角力を続けていくことは、しまくとぅばを守ることと同じ」との思いで、伝統の継承に引き続き力を注いでいく。