赤ちゃんからお年寄り、外国人も、国内に住民票がある一人一人に12桁の番号を割り当てるマイナンバーの個人通知が今月から始まる。

 本来は社会保障、税金、災害関連の行政手続きの個人情報を番号に結び付け一元管理することで、不正防止と事務効率化を狙うものだ。しかし来年1月の運用を前に、預金口座でも使用できる改正案が今国会で成立、消費税還付への適用検討などさまざまな使用範囲の拡大が浮上しており、注視が必要だ。

 個人情報を番号化した管理は便利だが、一元化された情報ほど流出の危険性は増す。共同通信が実施した全国市町村調査では、6割の自治体が情報管理の安全対策に「不安を感じる」と回答した。

 政府は第三者機関「個人情報保護委員会」で個人情報漏れやマイナンバーの不適切な利用を監視するというが、国民1億2千万人に対し、80人態勢という小規模スタートで役割を果たせるか疑問だ。

 年金加入者の個人情報約125万件が外部に流出した日本年金機構へのサイバー攻撃は記憶に新しい。すでにマイナンバーをかたり、預金口座番号など個人情報を聞きだそうとする不審な電話や訪問があったとの相談が各地で寄せられている。

 社会保障番号を導入する米国でも近年、他人の番号を用いてクレジットカードを作る「なりすまし」犯罪が多発しているという。

 前のめりの適用拡大より、まず不正利用対策の充実が急がれる。

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 マイナンバーのシステム構築で自治体は膨大な財政負担と向き合うが、それに見合う効果が期待できるか、という疑問もくすぶる。

 国民番号としては、すでに2002年稼働した住基ネットによる11桁の住民票コードが存在する。パスポート申請や年金管理の簡素化をうたい、導入費用は全国で約400億円とされる。しかし国による国民監視やプライバシー侵害などを指摘する声が各地であがり違憲訴訟が相次いだ。国民の不信は根強く住基カードの交付は稼働から10年以上たった13年でも全国5%、県内6%にとどまった。

 国民の納得がなければ、マイナンバーも住基ネットの二の舞いとなろう。

 内閣官房は、マイナンバーのメリットの一つとして困窮者支援をあげる。実際にスウェーデンなど国民へまんべんなく社会保障を届けるため国民番号を利用する国もある。例えば生活保護の補足率アップなどマイナンバーを通した支援が実現するか、今後の運用を見極める必要がある。

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 総務省調査では、今回のマイナンバー通知に伴い、全国で少なくとも275万世帯分が「不在」などの理由で届かない可能性があることが分かった。住民票を移さず転居した被災者やDV・児童虐待の被害者、施設に入所する高齢者・障がい者らで、番号が届かず社会保障手続きの遅れが懸念されている。

 使い方次第でプライバシーを侵害し、悪影響を及ぼす。政府は懸念に向き合い、制度の監視を徹底すべきだ。