日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の業況判断指数(DI)が6月と比べ3ポイント下落してプラス12となった。悪化するのは3四半期ぶりである。大企業非製造業は2ポイント上昇し、プラス25と4期連続で改善した。背景にはいずれも中国経済の減速と中国人観光客の「爆買い」などがある。

 DIは業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた指数だ。気になるのは3カ月後の見通しについては、企業の規模や業種を問わず、悪化したことだ。

 安倍政権の円安誘導で大企業が潤う一方で、輸入する食料品価格が上昇し、家計を圧迫している。大企業の恩恵は下請けや従業員にまでしたたり落ちることはなく、消費拡大にもつながっていない。

 経済再生で社会保障を充実させるシナリオを描くアベノミクスの失敗が現実味を帯びていると言わざるを得ない。

 そんな中、安倍晋三首相は自民党総裁に無投票再選された記者会見で「アベノミクスは第2ステージへ移る」と宣言し、「新三本の矢」の経済政策を打ち上げた。

 「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」-の3本だ。言葉は踊るが、現実離れした数字が並ぶ。

 強い経済では、国内総生産(GDP)600兆円を掲げた。2020年度に目標設定し、名目で年3%前後の成長を続ければ現在の約499兆円から到達する計算だ。

 問題は年3%の成長はバブル末期の1991年度が最後であることだ。政府内から「非現実的」との声が出るのも当然だ。安倍首相も具体策には言及しなかった。

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 子育て支援では、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率を2014年の1・42から1・8に回復させる目標を掲げた。1・8は結婚して子どもを産みたいという人の希望がかなえられた場合の数字だが、具体策は新味がない。

 待機児童ゼロも挙げた。だが、全国の待機児童の数が4月現在、2万3167人で、5年ぶりに増加に転じたことが分かった。巨額の借金を抱える中で、財政的な裏付けを提示していない。

 社会保障では、介護離職ゼロを据えた。高齢者の介護のために離職する現役世代は年間10万人を超える。介護人材の育成を図るとしたが、低賃金や重労働のため慢性的な人手不足だ。待遇改善を進めなければ解決できない。

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 そもそも「新三本の矢」の前に、金融緩和、財政出動、成長戦略の「三本の矢」の総括をするのが先ではないか。

 安倍首相が自画自賛するのとは裏腹に格差は広がるばかりだ。実質賃金は伸び悩み、非正規労働者が約4割を占める。生活保護の受給は6月末現在、162万5941世帯と過去最多を更新している。

 共同通信の世論調査で内閣支持率は安保関連法成立後に38・9%に下落した。「経済最優先」をアピールし、来年の参院選を念頭に、安保法案に対する厳しい世論をかわすのが目的ではないのか、との疑念が消えない。