長く沖縄に押し付けてきた過重な米軍基地を本土に引き取り、平等な負担を目指す運動が福岡県でも始まった。子育てしながら大学院で学ぶ女性や芸術家など30~40代を中心に多様な住民が会を結成。沖縄に住んだ経験や安保法制の議論を振り返り「私たちは加害者をやめたい。面前の不公平を知らんぷりしたくない」とつづった会報を作った。東京都内のシンポジウムで来場者向けに50部を置くとすぐになくなり、東西をまたいで反響を呼んでいる。(新里健)

福岡県民が結成した「引き取る会」の会報。先に同様の行動を始めた大阪府民からの応援メッセージも載っている

 「本土に米軍基地を引き取る福岡の会」は9月に発足した。会報を「RETURN」と名付け、7人が寄稿し「0号」を発行した。

 冒頭に載った里村和歌子さん(40)は夫の転勤で1年間沖縄に住んだとき、県民がよそよそしいと感じた。本土に戻り大学院で社会学を学ぶ中で、琉球処分や沖縄戦、米軍基地の偏在に対する県民の「声なき抗議」だと気付いた。会報にはその経緯を記し、「私たち日本人が70年間も沖縄に米軍基地を押しつけ続けた責任を取るために、本土(福岡)に引き取る」と結んだ。

 美術作家の三輪恭子さん(32)は8月、「イチハナリアートプロジェクト」の出展作を手掛けるため伊計島に滞在中、島の沖合で米軍ヘリが米輸送艦に墜落した。深夜に米軍機の爆音も聞こえた。福岡に戻り「沖縄とは空があまりに違う」と実感。引き取る会に加わり、会報の表紙を考えた。空の写真を背景にし、沖縄の過重な基地負担を図案化したロゴを載せた。「平等な空を目指したいという思いを込めた」と語る。

 舞踏家の新部健太郎さん(38)も「安保法案の議論で沖縄は蚊帳の外に置かれていた。国民一人一人が沖縄への加害者であり、安倍政権を批判するだけでは何かが違う」と記した。

 会は、同様に基地を本土へ引き取るべきだと訴える高橋哲哉・東京大学大学院教授を招き、福岡市で9月19日に講演会を開いた。3人も壇上で思いを語り、市民約70人が熱心に聞いた。

 高橋教授は23日、都内で自身が登壇するシンポジウムに会報を持参。次々に来場者が手に取ってすぐになくなったと驚き、「大阪と福岡に続き、東京でも『引き取る運動』が始まるかもしれない」と期待を寄せた。