夫婦のように、社会的な「契約」を交わした関係とは対照的に「恋人」や「友人」関係は「情」という曖昧な言葉で結びついた不安定で難しいもの。近代絵画の父と称される世界的画家セザンヌも愛や友情に救われただけでなく、苦しみ、傷ついた人間の一人。物語は晩年まで評価されず苦しんだセザンヌの人生を彼と40年間友情を育んだ文豪エミール・ゾラの目線で描く。

「セザンヌと過ごした時間」桜坂スクリーンガイド

 印象的なのは一緒にいるだけで「友情」を確認できた幼少期とは全く違う、大人の友情。お互い芸術の世界に身を置き、作品評価が人間としての社会的存在価値につながる現実はセザンヌを苦しめた。

 唯一の友こそが成功者の代表格であり、最大の嫉妬の対象。悪態をつけばつくほどむなしくなる。世間を嫌い、しかし、愛されたいと願ったセザンヌの不器用な人生がとてもいとおしい1本。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で1月13日から上映予定