6月に公選法が改正され、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられることを受け、文部科学省と総務省は「主権者教育」の一環として、高校生向けの副教材「私たちが拓(ひら)く日本の未来」と教員向けの「指導資料」を作成した。両省がホームページで公表している。12月までにすべての学年の高校生らに配布する。

 副教材は「解説」「実践」「参考」の3編構成だ。

 まず副教材は「政治は難しいとか、自分の力では政府の決定に影響を与えられないと思ったことはありませんか?」と問い掛ける。

 意識調査で「そう思う」と回答した高校生が日本は約8割と米・中・韓国に比べ高い割合を示す一方で、「社会や政治問題へ参加した方が良い」と回答した日本の高校生は7割を超えていると紹介。主権者教育は政治参加への思いをかなえるため、知識や判断能力を高めるチャンスだ。

 実践編には政策論争と模擬投票などが盛り込まれている。「民主政治は、討論で物事を決める政治であり、話し合いの政治」と規定。「少数意見をできるだけ吸収する」と少数意見の尊重を強調している。あるべき民主主義を実践する場となり得る。他者の意見をよく聞き、自由に話し合える雰囲気づくりを重視しているのも評価したい。

 さらに実践編には「地域の課題の見つけ方」として「グローバルと同様にローカルな視点で身近な社会を知ることも重要」と指摘している。沖縄でいえば辺野古新基地建設問題をはじめとする米軍基地である。避けては通れない。

    ■    ■

 教員向けの「指導資料」は全96ページのうち72ページ以降がすべて「政治的中立性」に留意する内容である。教員を萎縮させないか心配だ。すでに兆候が出ているからだ。

 自民党文科部会が7月、「政治的中立」を逸脱した教員に罰則を科す法改正を安倍晋三首相に提言。山口県の高校では6月、安保法案に賛成・反対でグループに分かれ、どの主張が最も説得力があったかを模擬投票したが、参考資料が全国紙2紙だけだったことを自民党議員が「中立性に疑問を感じる」と県議会で追及、教育長が謝罪している。法案の賛否を問うたのではない。これでは教員は面倒になりそうなテーマを避けるに違いない。主権者教育に逆行すると言わざるを得ない。

 教員が特定の政党や候補者を推すことは選挙運動に当たり、公選法に触れるのは言うまでもない。生きた政治をどう取り上げるか、教員の力量もまた問われる。

    ■    ■

 民主主義の基礎は選挙である。来年7月の参院選から18、19歳の約240万人が新たに有権者入りする。高校生では現在の3年生全員と2年生の一部が有権者となる。

 若者の投票率は全国と同様県内でも低い。県選挙管理委員会によると、20代の投票率は2014年の知事選と衆院選、13年の参院選、12年の県議選のいずれも年代別の投票率で最低だった。

 主権者教育を受け、政治意識に目覚めた新しい人たちの登場で、投票率アップにもつながればいうことはない。